
赤道ギニアは、文字通り赤道上にある西アフリカの小国で、旧宗主国はスペインである。1979年のクーデター以来、オビアン大統領が長期政権の座についている。
◆赤道ギニア共和国(Republic of Equatorial Guinea)
言語・・・・スペイン語(公用語)、仏語(第2公用語)、ブビ語、ファン語
宗教・・・・キリスト教(99%)、伝統宗教
1968.10・・・・スペインから独立
1972.7・・・・マシアス・ンゲマ終身大統領就任
1979.8・・・・オビアン・ンゲマ政権成立(クーデター)
1989.6・・・・オビアン・ンゲマ大統領再選
1996.2・・・・オビアン・ンゲマ大統領3選
2002.12・・・・オビアン・ンゲマ大統領4選
311テロの4日前に、この赤道ギニアでクーデター未遂事件が起こったが、クーデターの「主犯」として逮捕されたのは、「鉄の女・サッチャー」の息子、マーク・サッチャーだった。
◆JANJAN:「サッチャーの倅とアフリカ産油国転覆計画」(2004/11/01)
今年3月、南アフリカ共和国から傭兵64人を乗せた飛行機がジンバブエ・ハラレ空港に着陸、待機していた。元SAS(英陸軍特殊部隊)のエリートで現在は傭兵会社を営むサイモン・マン氏が、ジンバブエで購入した大量の兵器を積み込むためだった。
ところが、ジンバブエ警察が飛行機を急襲した。傭兵たちは武器を携え赤道ギニア共和国にクーデターに向かうことになっていたのだ。ジンバブエ政府は赤道ギニア共和国から情報が入っていた。クーデターの先遣隊として赤道ギニアに入っていた南アフリカの元兵士ニック・ドゥティ氏と同氏が率いる傭兵15人が、同国で逮捕されていたからだ。
囚われの身となったトゥディ氏は、赤道ギニアの法廷で「サッチャー氏と繰り返し(クーデター計画を)打ち合わせた」と証言した(させられた)。
サイモン・マン氏からドゥティ氏に200万ドルが振り込まれていたことも明らかになっている。マン氏とサッチャー氏は懇意だ。
これらを受けて南アフリカ共和国警察は「対外軍事支援規正法違反」の疑いで8月、サッチャー氏をケープタウンの自宅で逮捕した。同氏は30万ドルを積んで保釈され、現在は自宅軟禁の身だ。
簡単にまとめると、
- 南アフリカから64人の傭兵を乗せた輸送機がジンバブエに向かった。
- ジンバブエで武器を積み込み、赤道ギニアでオビアン政権を転覆させる計画だった。
- 輸送機のお膳立てをしたのは、南アフリカ在住のマーク・サッチャーであった。
- 実行部隊は、元SAS(英陸軍特殊部隊)が率いる傭兵会社であった。
南アフリカには「対外軍事支援規正法」があり、他国への武器援助・傭兵派遣などに関与した場合は、とても厳しい罰則がある。マーク・サッチャーは、当初懲役15年を言い渡されたが、クーデター関与を認めることで減刑するという「司法取引」があったようで、最終的に50万ドルの保釈金を払い、執行猶予4年となっている。
その後のマーク・サッチャーは、アメリカやモナコへの移住を試みたがビザの発給を拒否され、米テキサス州在住の妻とは離婚し、現在は新しいガールフレンドと一緒にスペインに住んでいるという。と、ここまでは、女性週刊誌にも載りそうな、誉れ高い男爵エリートの転落物語である。が、本題はこれからだ。
実のところ、このクーデター計画は、アメリカ・イギリス・スペイン3国が画策した「共同作戦」であり、マーク・サッチャーは石油財閥の「コマ」に過ぎないのだ。この共同作戦では、
1) 米Dodson Aviation社の子会社が輸送機を提供し、
2) イギリスの「石油ネットワーク」が資金を提供し、
3) スペインに亡命中の野党党首モト(Moto)を傀儡に据える、
という計画になっていた。亡命中のモトは、マーク・サッチャーのビジネスパートナーに導かれ、クーデターの前日に自家用ボーイング727機でスペインのカナリア諸島へ向かい、当日はマリの首都バマコで待機している。
赤道ギニアの現政権を倒し、スペイン亡命中のモトを傀儡に据えた場合、アメリカ・イギリス・スペインにとって、どのような利害関係が生じるのだろうか。
赤道ギニアは、サハラ砂漠以南では、アフリカで第3の規模を誇る産油国である。赤道ギニアで石油利権を握るのは以下の3社である。
- エクソン・モービル(Exxon Mobil)・・・・米ロックフェラー財閥の石油企業
- アメラダ・ヘス(Amerada Hess)・・・・アメリカ生まれのユダヤ人石油王、Leon Hessの会社
- トタール(Total)・・・・フランスの石油企業
さらに、アメリカのマラソン・オイル(Marathon Oil)が天然ガス油田の開発で、赤道ギニアに10億〜30億ドルの投資を計画していた。この投資額は、天然ガス投資としては史上最大である。このマラソン・オイルはモルガン財閥が所有するUSX社(旧United State Steel)の子会社である。
アメラダ・ヘスも天然ガスパイプラインを得意としている。1993年に北海の天然ガスパイプラインをイギリスに引いたのもアメラダ・ヘスである。
つまり、赤道ギニアのクーデター事件は、アメリカ・イギリス・スペインの石油財閥の後押しによって、3国の諜報機関が動いた事件ということだ。最終的な狙いは、
1)フランス資本のトタールを締め出し、
2)その代りとしてスペイン資本のレプソルを引き込み、
3)アメリカ資本のエクソン、マラソン、アメラダでめでたく独占する、
ことにあったようだ。
さらに驚くことに、この事件では、NATOの正規軍も「クーデター」に援軍を送っていた疑惑が発覚している。
◆France Checkmated NATO (The Oil Dispute in Equatorial Guinea) (2004/8/31)
At the moment in which the plan entered its final stage and mercenaries were ready to act, two Spanish warships suddenly set sail from a NATO base in Rota, with 500 elite soldiers on board. It seemed that only they knew what their destiny was and Spain had not sent any warship to Equatorial Guinea since the independence of this African country in 1968. The direction of the two ships was controlled by the Commander in Chief of the Command of the American forces in Europe and NATO Supreme commander, General James L. Jones.
【要約】計画の最終段階で、スペイン軍艦2隻が500人の兵士を乗せて、NATOのロタ基地から出航した。スペインが赤道ギニアに軍艦を送るのは、赤道ギニアが独立した1968年以来はじめてのこと。この作戦の司令官は、欧州米軍司令官とNATO最高司令官と兼ねるジョーンズ将軍だった。
Information leaks, probably coming from South Africa, got the Spanish press and Aznar government order the convoy to stop at the Canaries. Through his Minister of Foreign Relations, Ana Palacio, the very same government -that never said anything publicly about the expedition- said that “it was not a war mission but a cooperation” to deliver military stuff to help Obiang in the border conflict between his country and neighboring Gabon. Aznar’s government spokesman added the decision was canceled “due to a misinterpretation caused by the press” and that it was wise to postpone it after scheduled elections for April in Equatorial Guinea [8]. This NATO involvement left no doubts on the U.S. participation on Thatcher, Mann and his partners’ projects.
【要約】南アフリカからのリークが原因で、アスナール政権はこの軍艦2隻をカナリア諸島でストップさせた。パラシオ外相は「ガボンとの国境紛争でオビアン政権に援軍を送るためのもの」といい、政府スポークスマンは「マスコミが誤解を広げたため中止した」と語った。NATOまで絡んでいたということは、マーク・サッチャーやマン(傭兵部隊のチーフ)の計画にアメリカが参加していたことは疑いもない。
南アフリカでリーク情報を流したのも、傭兵64人を乗せた輸送機の存在をジンバブエ政府と赤道ギニア政府に伝えたのも、フランスの諜報部の手柄とされている。アメリカ資本の大陰謀から、フランス資本トタール社の利権を守り抜いたことになる。
これは私の推理だが、この赤道ギニア・クーデター計画(3月7日)は、スペイン列車テロ(3月11日)と日程を合わせたものとみる。311テロで大騒ぎになり、アルカイダの犯行というデマをばら撒く中で、アフリカの小国で起こった「石油独占クーデター」から世界中の目をそらすことができるわけである。
◆Spain: Madrid Commission confirms conspiracy of lies used to justify Iraq War (2004/12/29)
The evidence emerged when current Prime Minister Jose' Luis Rodri'guez Zapatero testified at the Spanish Congressional Commission of Inquiry into the Madrid bombings. Zapatero confirmed allegations first published in the Spanish daily El Pais on December 13 that the former Popular Party (PP) government led by Jose' Mari'a Aznar ordered the destruction of computer records dealing with the key period between the Madrid train bombings and the general election held three days later that it lost to Zapatero’s Socialist Workers Party (PSOE). El Pais reported that a specialist computer company was paid $12,000 to erase the computer records, including back-up security copies.
【要約】スペインのサパテロ首相は、マドリード列車テロと3日後の総選挙の期間において、政府関連のコンピュータファイルはすべて破壊された、と議会委員会で証言した。エル・パイス誌は、バックアップファイルを含むすべてファイル削除にあたり、ある企業に1万2千ドルが支払われたと伝えた。
2004年のスペインでは、311テロの3日後に総選挙があり、アスナール政権の政党は惨敗し、現在のサパテロ政権が生まれた。選挙直前のドサクサに紛れて、政府関連のデータベースが全部削除されたという事件である。311テロの謀略を示す証拠をすべて抹消しようとしたのだろうか。
◆毎日:「CIA機:スペイン外相、存在認める」(2006/9/15)(ネットソース)
【ブリュッセル福原直樹】スペインのモラティノス外相は14日、米中央情報局(CIA)のテロ容疑者不当拘束疑惑を調べている欧州議会で「CIAが不当拘束に使用したとされる飛行機がスペインの空港に66回着陸した」と証言した。欧州連合(EU)加盟国の閣僚クラスが同議会でCIA機の存在を認めたのは初めて。ブッシュ米大統領は今月6日に秘密収容所の存在を認めており、外相の指摘するCIA機が秘密施設の間を結んでいた可能性がある。
外相証言によると、スペインの照会に米国は離着陸を認めたが、「(スペイン着陸時は)テロ容疑者を運んでいなかった」と説明したという。だが、外相によると、飛行機の一部は秘密収容所の存在が指摘される東欧や、収容所のある米軍グアンタナモ基地(キューバ)を経由したという。外相は「スペイン経由のCIA機が過去に(不当拘束という)犯罪を行った可能性がある」としている。
米国のテロ容疑者不当拘束疑惑では01年の同時多発テロ事件以降、CIAがテロ容疑者を法手続きを無視して拘束し、第三国や米国の収容所に移送したとされる。欧州議会は01〜05年にCIA機が欧州に1000回飛来したと指摘している。(毎日新聞 2006/09/15)
アメリカの諜報部にとって、スペインはやりたい放題のおいしい拠点になっているようだ。アメリカの諜報部というよりも、アメリカに巣食う「軍事・石油・金融・マスコミ財閥」の諜報部といった方がいいのかもしれないが・・・。