2007年09月27日

バイブレーション(波動)に共鳴する人、しない人

アマゾンの書籍を「波動」で検索すると、量子論やシュレディンガー方程式の話から始まって、健康法や霊科学、心の波動、愛の波動、水は答えを知っている、いや何にも知るわけないだろう、ふざけるな、と実にさまざまな著作がある。

純粋に物理学の立場からすれば、物理学以外の「波動」なるものはいかがわしい。とはいえ、セルフヘルプや自己啓発の本であれば、まあ許せるということであろうし、出版社側も調子に乗って「波動」を連発することもあるかもしれない。

だが、英語圏の成功哲学分野では、この「波動(vibration)」は嫌われている言葉らしい。

以前、映像系の自己啓発プログラム『The Secret』を紹介した。成功哲学で人気を集めている著者やセミナー講師が数多く登場するビデオだ。

このプログラムは、もともとはヒックス夫妻(Esther Hicks & Jerry Hicks)が「アブラハム」という100体の宇宙意識集合体から受けたとされるチャネリングの内容を、オーストラリアのTV放送局向けにまとめたものだった。

ところが、DVD化にあたり新規投資を募ったところ、「私も入れて」「俺も入れろ」という具合に、数十人の業界のマスターが参入し、顔を売るための寄せ集め的なDVDとなった。さらに、当初DVDで中心的な登場人物となっていたヒックス夫人(Esther Hicks)がこのプロジェクトから撤退し、第2版からは彼女の映像がすべて消されてしまっている。

この背景はとても興味深い。ヒックス夫妻の最新の著作『The Astonishing Power of Emotions』によると、トラブルの発端はDVDの製作会社が、アブラハムのチャネリングの内容から「vibration(波動)」という言葉を編集して削除したことに始まる。金回りをよくするという成功哲学を売り込む上で、この「波動」が嫌われたことになる。

さらに、ヒックス夫妻が何千回も読んだという愛読書『Think and Grow Rich』(ナポレオン・ヒル著、邦題:思考は現実化する)においても、出版社側の「検閲」によって「vibration」という言葉が37カ所にわたり削除されているという。

ということなので、成功哲学の要は「波動」にあり、これを封殺する陰謀がうごめいていると妄想しておこう。ちなみに『The Secret』というビデオにはサブリミナル的な手法もあるが、人間の思いが「波動」となって放射されることを映像化した点は、大いに評価したい。

■おまけ:全然関係ないけれど、以下の人は最近どうしてる?
  • 辻元清美の波動(vibe)砲:高槻市を「無防備化」する狙いとは

  • posted by ヒロさん at 08:18 | Comment(12) | TrackBack(0) | 「引き寄せ」の考察

    2007年09月25日

    全体主義学者へ捧げる、ミズ知らずの私からの伝言

    私の住居の周辺ではシュタイナーのバイオダイナミック農法が盛んだ。植物に水を与えるときは、容器に入れた水に独特の渦巻きをつくり、水のエネルギーを励起させて上で散布している。(この「儀式」に科学的根拠があるのかどうかわからない)

    浄水器などの水ビジネスも盛んで、江本勝の『水からの伝言』の英訳を読んでいる人もいる。シュタイナー農法の渦巻き水の散布と同様、「ありがとう」という文字札で水の結晶が変わるとされるメカニズムは何なのか、その実験にどの程度の再現性があるのか、私は知らない。が、「水の結晶が変わる」→「体によい水になる」がとりあえず信じられるなら、自分で人体実験をするのも悪くない。

    ロンドンでは東洋言語の文字を刺青(いれずみ)にするタトゥーサービスもある。先日電車に乗っていると「父子愛」という刺青をしている男性がいた。体のいろんな場所に「愛・愛・愛」という刺青をすると、体内の水の形態に変化が起こるかもしれない。

    もっと派手にやりたい人は、耳なし芳一のように全身に「ありがとう」の写経をする。あるいは「感謝」という文字で埋め尽くしたTシャツを着る。ナノチューブで「健康」「安眠」という文字を編み、これを繊維にした下着を着用する。

    『水からの伝言』に対する痛烈な批判があることは知っていたが、水ビジネス側からの反論を読んだことがなかったので、以下に紹介したい。

    ニセ科学批判者を批判する(2007/9/10)
    江本氏が述べていることは、半分は科学的なことだが、あとの半分は科学の領域を超えたことであり、江本氏自身がそれをポエムと言い、ファンタジーと言っている。ニセ科学批判者たちはそのファンタジーの部分を、自分は科学者だ、あれは科学的に間違っている、と攻撃している。

    しかしそれは「キリストが生き返ったはずはない、あれはウソだ、宗教を広めるためのペテンだ、おれは科学者だから間違いない」とキリスト教を攻撃するようなもので、実にセンスの悪い話である。それどころか、さらには、「追実験をして否定しろ、それが科学立国だ」などと言う人まで現れてくる。ファンタジーの追実験など出来るわけがない。議論のレベルの低さに呆れてしまう。

    そして彼らは、「水からの伝言」が小学校の道徳の授業に使われることを攻撃する。その攻撃は当然、その授業をする小学校教諭に向けられなければならないのに、彼らは何を血迷ったか、江本氏のファンタジーそのものを躍起になって攻撃し、 学習院大学の田崎氏に至っては、インターネットで小学生に直接、「君たちの先生を信じちゃいけないよ」と呼びかけるという、教育界の掟やぶりを平気でして いる。重ね重ねの迷走ぶりである。

    そもそも、「水からの伝言」の社会的影響を批判する、という行動そのものが、彼らの力量をはるかに越えている。彼らにはそんなことをする力量も資格もな い。彼らには哲学とか宗教とかの知識も経験もまったくないし、社会を変えよう、正そう、という覚悟もない。科学分野でそこらの大学に職を得た者が、おれは 科学者だ、と言って、ヒマに任せてインターネットで遊んでいるだけである。

    ついでに言うと、江本氏の報告で科学的に意味があるところは、「水が結晶を作る」という事実そのものと、水の来歴によって結晶の出来方に差がある、という2点である。これらのことは科学的に追試すべきことだろう。それをせずに、あるいは、それもできずに、批判の合唱をするのは、身の程知らずである。

    このような身の程知らずで、「総否定論」を遊んでいる論客の1人が大阪大学物理学の菊池誠教授だ。彼のブログはkikulog(キクログ)と呼ばれている。いまやアメリカ人の8割近くが「政府関与」を疑う911テロ事件ついて、臆面もなく以下のように発言する。

    kikulog:「11th of September」(2007/9/12)
    ★9.11はアメリカ政府の自作自演だとか、WTCの崩壊は爆破によるものだとか、そういうたぐいの陰謀論を弄ぶ人たちがいまだにいます。妄想力はあっても想像力のない人たちということですが、死者への冒涜という意味でも許し難い。
    ★9.11自作自演説や月着陸捏造説は「非常に高いありえなさ」で、ダイアナ妃については「ありえなさ」はもっとずっと低くなるのでしょうね(これについては、ほとんど理解していません)。
    ★9.11陰謀論にはまったく「理」がないので。陰謀論者は文字通り「陰謀論を弄んで」いるだけですよ。
    ★9.11のような事件を最後まで(今にいたるまで)秘密を漏らさずに遂行するには、いったい何人が口裏を合わせなくてはならないのか、というのが最大の問題です。
    ★9.11に関する限り、現在知られている常識的な事実で説明できないことはありません。

    菊池教授がいえることは、せいぜい「WTC1とWTC2の崩壊は制御解体であるという証拠はなにもない」という程度であるはずなのに、『陰謀論の罠』(奥菜秀次著)が自分の意見を代弁したことで舞い上がっているようにみえる。今回、菊池教授批判で引用しているのは「マイナスイオン水生成器」を製造・販売してい吉岡英介氏のサイトだが、同氏は「私は、このような謀略を、検証したり証明しようとは思っていない」と述べながら、まっとうな感覚で批判している。

    9・11はアメリカの謀略である(2007.09.22)
    菊池氏は、「ありえなさ」を基準にして考えれば、真相はおのずから明らかだと言う。そして、菊池氏は、911にアメリカの権力中枢が関与した可能性を、火星人が関与したと同程度の「ありえなさ」だと決めつけて、真っ先に排除している。しかし、なぜ、アメリカの権力中枢が911に関与することが「ありえない」のか、彼はその理由を語っていない。

    唯一、それらしき主張は、もしアメリカの権力中枢が関与したとしたら、その関係者の数は膨大なものになって、とても口止めなどできないだろうという、それくらいである。しかし、ケネディ暗殺においても、事情はたいして変わらない。そしてケネディ暗殺に関連しては、これまで多くの人々が不慮の死を遂げたり行方不明になったりしていると言われている。

    菊池氏は、アメリカの権力中枢が911に加担したとしたら、どのくらいの人数が関与しなければならないかを算定し、それらの人々に口止めするのに、どれくらいの報酬あるいは「死の恐怖」が必要かを算定し、その上で、その「ありえなさ」を語らねばならない。

    しかし菊池氏はそうしない。

    彼は、アメリカの権力中枢が、自国民を平気で殺すような陰謀をするはずがない、というナイーブな先入観を持っていて、その先入観によって、アメリカの権力中枢の関与を真っ先に排除してしまった。そこから先はほとんど思考停止に陥っている。

    「ありえなさ」を基準に判定するのは合理的である。

    そして、そう言うなら、それに徹すべきだろう。途中で自分の恣意的な判断を差し挟むべきではないし、陰謀の可能性を考察することが死者を冒涜することになる、などという勝手な感情論は、真相解明の邪魔にしかならない。

    この部分は全面的に同意できる。「死者の冒涜」を口に出すのは、死者や遺族を自分の援軍だと思い込むことで舞い上がる、張子の虎だ。そもそも、当日防空網が機能しなかった背景は何なのか、遺族たちはどうして911独立調査委員会を要求したのか、少しは勉強してみるがいい。

    私が「WTC2の疑問:鉄骨軟化による自重崩壊か、それとも制御解体か」の議論で学んだのは、WTC崩落という前代未聞の物理現象を「日常生活的な印象で語ってはいけない」ということだった。

    一方、菊池氏のナイーブな点は、世界最大の軍事・情報大国の権力犯罪の可能性について、まるで大阪大学の教授会程度の「日常的な政治学」の感覚で、常識的にありえないとしていることだ。あるいは国から助成金をもらう研究者として、権力犯罪は不問にするという信念をお持ちなのであろうか。


    ■おまけ:大阪大学菊池誠氏の言語能力の欠如(2006/12/6)
      ところが、菊池誠氏はそんなことにはお構いなしである。「マイナスイオンはニセ科学」と言ってはばからない。その表現によってマイナスイオンを取り扱っているすべてのビジネスを十把一絡げで断罪した。実名を上げ、司法によらずに風評被害をあおってきた。
      私はこのようなやり方を、全体主義と呼ぶ。99をやっつけるのに、残りの1つを一緒にやっつけても、まぁいいか、世のためだ、という考え方である。そしてそれは、ニセ科学批判者たちに共通する考え方である。
      なぜ共通するかというと、ニセ科学批判者たちの全員が、自分でビジネスをしたことがないからだ。その言論を見るに、ほとんどの者が「官」から禄をもらい、自分で稼ぐことを「卑しい行為」だと考えている。士農工商、切り捨て御免である。
      私たちの現代社会は、そういう乱暴なことが起こらないように、細心の注意を払って形成されているのだが、菊池氏らニセ科学批判者たちは、それをぶちこわして平気であり、自分たちは社会正義を実行しているつもりになっている。しかもそのような言論を、国民の財産である大阪大学の公式サイトから勝手に発信している

    「ニセ科学・批判者」なのか、「ニセ・科学批判者」なのか。どっちだ?

    ■今日の必読リンク: 9・11 はアメリカの謀略である(2007.09.22)
    posted by ヒロさん at 09:03 | Comment(37) | TrackBack(1) | サイエンス+数学
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