電子辞書は持ち運びが便利だ。キータッチに慣れれば、検索も速い。発音も聞ける。用例などの本文検索も可能だ。英和と同時に和英も使える。国語辞典・外来語辞典・連語時点・英英辞典も同時に検索できる。
私は放任派だが、教師の中には「電子辞書を使ってもいいけれど、紙の辞書も必ず持ちなさい」と指導する人もいる。辞書という文化に慣れ親しまないのはまずい、紙の辞書の方が全体を一望できる、図版が豊富だ、アルファベットの位置関係や重み(pは後半にある、sは厚い、など)を理解できる・・・などが理由だ。
私は長年、研究社の「リーダーズ英和辞典」にこだわってきたが、語源の解説があることが理由だ。どんなに用例が図版が豊富でも、語源が明示されていない辞書はいただけない。
だが、ネット時代になって語源検索もかなり便利になってきた。私が常用している Online Etymology Dictionary は優れものだ。このオンライン辞書を使ったリサーチを生かし、語源を理解しながらボキャブラリー・ビルディング(語彙拡大)を試みる授業をやってみた。
たとえば、「sk-, sc-, sh-」で始まる単語は北欧起源のもので、大半が「切る」ことに関係がある。もともとは「sk-, sc-」(スクッ)という音だったが、k→hの転化で「sh-」(スフ、シュ)という音と綴りも生じた。
古代社会では服は動物の皮(skin)を剥ぎ取ってワンピースをつくっていた。上下を分けた方が便利と思い、スパッと切ると、上がシャツ(shirt)になり、下がスカート(skirt)になった。丈は両方とも短く(short)なったのは言うまでもない。究極的に短い下着(scanties)は恥ずかしいけど。
切るときには鋭利(sharp)なハサミ(scissors, shear)を使いましょう。人に着せたままで切っちゃうと、その人の皮膚を傷(scar)つけるので要注意。ブシュッと串刺しにしたいときは<skewer>を使ってね。
皮をひきはがすのは<skin>だけど、ウロコを取るのは<scale>、脱皮するのは<shed>、鞘や殻を取るのは<shell, shuck>で、髭を剃るのは<shave>。これはたいていは共同作業なので、分け前(share)の分配はしっかりね。
切るといえばなんといっても木材。丸太をくり抜いて舟(ship)をつくり、木彫り(sculpture)を仕上げ、あらゆるものを形(shape)づくった。木をひっかいて文字を記録したり(script)、20単位で数えたり(score)。楽譜がどうして「スコア」と呼ばれるのか、よ〜く考えてみて。
ひっかいた(scratch)話といえば、こするのは<scrape>だし、ゴシゴシするのは<scrub>だ。スケート<skate>のようにスイスイ滑ったほうがいいんじゃない? トランプをシャフシャフするのは<shuffle>だけど、勝ち負けにこだわると、つかみ合いのけんか(scuffle)や、ラグビーのスクラム(scrum)のようになっちゃうよ。
けんかで怒り狂って、床にものをばらまいたり(scatter)、食器を粉々に割ったり(shatter)、家具を揺すったり(shake)、夜中に叫んだり(scream)、それでも済まなくて金切り声を出したり(shriek)しないでね。
切ることは、すなわち分かつこと。しっかりと楯(shield)や壁(screen)をつくって、安全なシェルター(shelter)をつくりましょ。シェルターは敵の攻撃をかわすことのできる水辺(shore)がいいかも。
さて、勉強もくたびれたのはおやつにしようかな。冷蔵庫のハーゲンダッツをダブル・スクープ(scoop)しようか、それともスキム(skim)ミルクにしようか。
今日のまとめ。「切る」ことは剥いだり、削いだり、刺したり、刻んだり、創ったり、とみんな「刀」を意味するリットウがある。「分ける」にも刀があることを忘れないでね。
今日の話が絵巻物(scroll)のように面白かったという人は、このページを印刷してファイルにスクラップ(scrap)。つまらなかった人はシュレッダー(shredder)にぶち込んでちょうだい。
分かった?
■補習:
スカッド(scud)ミサイルも、肩(shoulder)も、スキー(ski)もみ〜んなお仲間。でもスキューバー(scuber)ダイビングは、self-contained underwater breathing apparatus の略だから誤解しないように。