2009年09月26日

オーディオブックとBBC Podcastで深まりゆく、耳読書の秋

私の担当する高3クラスの生徒のひとりが7月にTOEICを受けたが、8月に戻ってきた結果通知は驚異的なものだった。

935点!!

私が十数年前に取った点数が940点なので、かろうじて5点差で教師の体面を保っているが、この子はなぜこんなに英語ができるのだろうか。小学5年のときに1年間アメリカの学校に通った実績はあるが、帰国子女の経歴としてはかわいいものだ。両親は日本人で、日本でインターナショナルスクールや英語塾に通ったこともない。

本人に「どうやって英語をキープアップしたの?」と尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。

オーディオブックを聴いていました。

つまり、たった1年の海外体験が起爆剤となり、帰国後にさまざまな英語のオーディオブック(CD)を毎日のように聴くようになる。骨が成長するときに取り組んだものは、驚異的なスピードでマスターできると言われているが、この生徒の場合は、耳の骨が成長するときに、英語の音が耳にグングンと染みこみ、焼きついたかのようだ。

児童文学の英語は、場合によっては大学入試の英語より難易度が高い。「チャーリーとチョコレート工場」、「ハリー・ポッター」、「赤毛のアン」、「不思議の国のアリス」、「若草物語」などを英語で挑戦した人は心当たりがあるだろう。

さまざまな物語をまず耳から吸収し、次に英語と日本語の両方で書籍を読み、何度も読むうちに語彙もほとんどすべてマスターする。映画化されているものはDVDも鑑賞する、という具合に楽しみは加速する。



留学を考えている人は、まず「聞くこと」に比重をかけるべきだ。オーディオ素材は本とCDをセットで揃える手もあるが、とにかくMP3プレーヤーで聞くことに照準を合わせたい人は、「Digital Audiobook」からダウンロードするとよい。月1冊のダウンロードの場合、素材の長短を問わず、最初の3カ月は毎月約600円、4カ月目から約1200円だ。

時事ネタに関心のある人や、お金を一切かけたくないという人は、BBCのPodcastをお奨めしたい。240という膨大なメニューは圧巻で、ニュース、討論、インタビュー、ドキュメンタリー、サイエンス、音楽、芸能などのどこかに掘り出し物が見つかるはずだ。

ちなみに私のお気に入りは「Forum - A World of Ideas」「Documentaries」「Music Week」「Books and Authors」「Arts and Ideas」だ。

これらの素材をいつ、どこで聞くか。パソコンの前で聞いていても眠くなるし、あまり細切れの時間でも困る。

  • 買い物に出かける時間と、これに引き続く夕食の準備の時間。
  • 食後の片づけ、アイロン、お掃除のとき。
  • 通勤の時間、自転車に乗るとき。
  • 肩振りなど、運動の最中。

    1つ目の「買い物→炊事」はほぼ毎日発生し、30分〜1時間の枠が取れるので活用している。出かける前に家の中でMP3プレーヤーをスタートし、買い物と炊事の間もずっと聞き続ける。その昔、台所でCDプレーヤーを使ったこともあったが、水回り・鍋・フライパンの音などで聞き取りが難しい。イヤホンで聞くに限る。また、手足を動かしながら聞くとなぜか調子がよい。

    このような時間を上手に活用したおかげで、パソコンの中に眠っていた約50冊のオーディオブック(CD500枚)も、徐々に鑑賞が進んでいる。この夏は「Inkheart」、「Lisey's Story」、「Bel Canto」、「Chocolate Run」、「Learning to Swim」などが終了。迎える秋は「Hancock's Half Hour」、「Last Kingdom」、「Life Swap」、「Penny Dip」、「Pair of Silver Wings」、「Ship of Brides」などで“耳読書の秋”を楽しんでみたい。

  • posted by ヒロさん at 02:15 | Comment(9) | TrackBack(0) | Learning English

    2009年09月22日

    視力低下は「脳の疲れ」が原因だった!

    ◆中川和宏 『視力低下は「脳の疲れ」が原因だった!』(青春出版社)76-78頁
     同じ近視でも、勉強や本を読みすぎたために起こった近視(一般近視)と、コンピュータ画面を見つめすぎたためになってしまった近視(コンピュータ近視)とでは、脳の疲れ方、治し方が全く違います。
     コンピュータ近視の場合、毛様体筋の過度の緊張といった原因はあるにせよ、最も考えなければいけないことは、脳の発想などを生み出す部分=前頭葉が休止状態になってしまっているのです。
     さらに恐ろしいことに、刺激に対する反応だけで、あらゆることを処理する傾向になってしまっていることです。極端な話になりますが、梅干しを見ると唾液が出る、といった反射運動だけで、物事を処理してしまう傾向になってしまいます。<中略>
     とにかく目の前に現れたデータを処理しよう、そのことだけに集中しよう、として、脳のデータ処理の部分だけが異常に働き、後の部分が休止状態になっています。極端にバランスが崩れています。
     脳のデータの処理の部分を休ませ、何かを生み出す部分(前頭葉)を目覚めさせる。これがエクササイズの目的になります。

    著者が提唱しているのは、イメージ・トレーニングによる視力回復法だ。ゲーム、テレビ、コンピュータに限らず、反応型のデータ処理ばかりをしていると側頭葉に負担がかかる。一方、人の顔であれ、風景であれ、スケジュール確認であれ、前頭葉に主体的なイメージを投影させている時間・回数があまりにも少ない。

    私は現在、英語圏の俳優の名前を覚える記憶訓練に取り組んでおり、顔写真から瞬時にフルネームを想起できる俳優が200人を突破した。ExcelのVBAマクロを使って顔写真をランダムにポップアップさせているが、WindowsのSlideshowを使うのがもっとも簡単なやり方だ。「顔写真を見て名前を言う」だけでなく、「名前を見て顔を想起する」ことも訓練している。

    とりわけ不思議なのは「名前を見て顔を想起する」という訓練だ。例えば、Audrey Hepburn、Cate Blanchetteという文字を見て、脳内にサッと顔を思い浮かべる。中にはIngrid Bergman と Grace Kelly のように顔が似通っている女優もいるので、その差を意識してしっかりと思い浮かべる。摩訶不思議なことに、100人、200人を使ってこのような想起を実行すると、終了後に視野がとても明るくなり、視力も上がっている

    これは一体どういうことなのだろう? 脳内に主体的にイメージを見ようとする力と、目を使って外界を見ようとする力が連動しているということではなかろうか。

    こういう言い方はどうか。映画やテレビは見ることだけで忙しく、後で主体的にイメージを想起することが少ない。手帳・パソコンによるスケジュール管理が進み過ぎると、仕事の流れがイメージできていない。小説を読んでも意味の解釈に追われて、生き生きとしたイメージが思い浮かばない。ヌード写真に反応はできるが、同じ映像を脳内にありありと思い浮かべることができない・・・。

    クリエイティブで発想豊かと言われている人たちは、イメージの構築力が強い。成功哲学や引き寄せの法則における最大のポイントは、未来の自分を絵のように見ることにある。そして視力低下の本質は、心の目を鍛えていないことに原因があるかもしれない、ということだ。

    イメージを喚起する力は誰にでもある。大脳生理学によれば、人間が1日に思い浮かべる想念は2万件あり、その97%が連想ゲーム式に呼び起こされる過去のイメージだという。この連想ゲームが自分の未来を切り拓くイメージであってくれればよいのだが、そのほとんどは現状維持の思い込みや、暇つぶしのゴミ想念にすぎない。このような無意識的で反射神経的なイメージを、いかにして主体的なイメージに変えていくか、である。

    posted by ヒロさん at 20:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 視力回復への道

    2009年09月19日

    「めまい」と「眼前暗黒感」

    最近、1960年前後の映画をまとめて鑑賞中なので、成り行きでヒッチコックの『めまい(1958年 Vertigo)』を見ることになった。この映画のめまいの意味するところは、高所恐怖症に伴う回転性のめまいのようだ。

    ここ数十年、回転性のめまいなるもの感じた記憶がないので、椅子から立ち上がり、フィギュアスケートの回転のように高速でグルグルと回ってみた。小さい頃によくやった遊びだ。かつてはギャーと叫びながら畳に倒れ伏せたものだが、数十年ぶりにやってみると、視界はガクン、ガクンとぎこちない回転運動を繰り返すものの、足元のふらつきはいっさいない。目が回ることよりも、胸元や胃が車酔いのような症状になることのほうが少しばかり不愉快だ。

    めまいは「dizziness」でも「vertigo」でも同じだが、前者は、動揺性・浮揚性のまめいで、後者は回転性としっかり分けて使う人もいる。私は今まで「feel dizzy」というコトバを使ってきたが、よ〜く考えてみると、私の意味している症状は「めまい」よりも「立ちくらみ」だ。

    立ちくらみは医学用語を使うと、起立性低血圧(orthostatic hypotension)に伴う眼前暗黒感(dimmed vision)ということになる。広い意味では「diziness」に含まれるが、口語表現では頭から血がサッと引く感じのある「head rush」のほうがよさそうだ。

    幼少期の私は、お風呂場での立ちくらみがハンパではなかった。湯船から立ち上がると、十数秒にわたって目の前がほんとうに真っ暗になっていた。が、ふらふらした感じはなく、念のために壁に手を当てて体を支えながら、闇の帝王が去るのじぃ〜と待っていた。「眼前暗黒感」というコトバは言い得て妙ではあるが、低血圧の暗黒感よりも、悲観や自虐による心理的な“暗黒感”のほうがず〜っと深刻なのよね。

    posted by ヒロさん at 16:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・ドラマ・アニメ

    2009年09月02日

    ペンシルバニア州の目撃者:アーミッシュは電気羊の夢を見るか?

    数カ月前に『Friends』を見ていたら、これは何だろう、という会話があった。

    TVドラマ『Friends』:1-21 Fake Monica
    Fake Monica: Hi. I'm Monica.
    Monica: Oh. Monica! ...Hi. I'm Mo- ...nana.
    Fake Monica: Monana?
    Monica: Yeah. It's Dutch.
    Fake Monica: You're kidding! I-I spent three years in Amsterdam. (Asks her something in Dutch)
    Monica: Um, Pennsylvania Dutch.

    モニカが自分のクレジットカードを不正使用している偽モニカを追いかけ、ついにダンス教室でその女性とことばを交わすときの会話だ。自分の名前をオランダ語風の「モナナ」と偽ったが、相手がオランダ語に堪能だったので、「あの、ペンシルバニア・ダッチなの」とさらに逃げを打つ場面だ。ペンシルバニア・ダッチを話す人=アーミッシュ、とピンと来れば、ここで1回多く笑えるところ。

    TVドラマ『Sex and the City』:5-7 Big Journey
    Samantha: l'm eating with the Amish? Every time we stop, good-looking people get off and ugly people get on. This is the train to ugly.

    アーミッシュは『Sex and the City』にも登場する。サンフランシスコ行きの長距離列車に乗り込んだ主人公が、食堂車でアーミッシュの夫婦と同席し、サマンサが差別的な吐き捨てコトバを使うシーンだ。テレビもねっ、電気もねっ、おらの町には裁判もねっ、という人たちなのでテレビでおちょくってもOKという判断なのだろう。

    個人的に今なぜアーミッシュかというと、高校英語のテキストでもうすぐペンシルバニアを取り上げるからなのだ。

    ◆速読速聴・英単語 Basic 2400:「36. ペンシルバニアのアーミッシュの人々」p288-289
      フィラデルフィアに行く途中、ペンシルバニア州ランカスターに寄るのを忘れないでください。ランカスターはアーミッシュの居住地の真ん中にあります。アーミッシュの生活については、人気映画『目撃者』で描かれています。アーミッシュの人々は、大昔のように簡素な生活をすることを神が望んでいる、と信じています。
      アーミッシュの人々の小屋や農家には、電気がありません。この人たちは車を持たず、畑でトラックもトラクターも使いません。時には、他の人の車に乗ったり、バスやタクシーを使ったりすることもあるでしょう。でも、普段は歩いたり自転車に乗ったり、馬が引く馬車で田舎道を走ったりします。

    このテキストの読み方は微妙だ。農家には電気はないが、農家以外には電気があるということなのか。農家にはトラクターはないと考えてもいいのか。正確な知識を仕入れる必要があると思い、2009年5月出版の『アーミッシュの昨日・今日・明日』を参照することにした。

    同書によると、ランカスター・アーミッシュの約3割が農業で生計を立てており、牛乳生産が主な収入源だ。公共の電気は使用しない方針なので、ディーゼルエンジンで動く冷蔵設備つきのタンクに牛乳を保存している。よって「電気がありません」という記述は誤りだ。

    約3割が農業だとすると、残りの7割の職業は何なのか。1980年以降に大きな3つの流れが現れた。1つ目はパン屋、靴屋、金物屋、花屋、修繕屋、工芸品店、健康食品店、キルト店などの小規模家内産業。2つ目は町工場のようないくぶん大きめの産業で、農業機器、水圧機器、家具の生産。3つ目はランカスター郡の建設ラッシュで需要が増えた建設労働者。

    大工、配管工、塗装工にはなれるが、弁護士、医者、獣医になるのは不可能だ。「オルドヌング(ordnung)」という規約集が、裁判を起こすことや、高校・大学に行くことを禁止しているためだ。ただし、独学によるコミュニティ内の会計士は存在する。出産は4割がコミュニティ内の助産婦、6割が外部サービスを使用する。

    摩訶不思議なことに、畑のトラクター使用は不可だが、納屋ではOKだ。1880年代以降、アーミッシュ農家は脱穀機の動力としてスチームエンジンを使用しており、“小さな内燃エンジン”を使った電動のこぎり、肥料粉砕機、水圧ポンプ、洗濯機の使用は問題ない。トラクターはこれらの動力源として使われることが多く、「畑ではトラックもトラクターも使いません」という記述は正しい。

    ドイツ語で規則を意味する「オルドヌング」は時代と共に改訂されていく。自動車・トラック・バスは乗車するのはOKだが、所有と運転は禁止。『Sex and the City』のように列車旅行は楽しんでもいいが、飛行機はダメ。テレビカメラでポーズを取るのは禁止なので、映画『目撃者』はアーミッシュの協力なしに進行した。教会指導者は撮影に協力したものは破門にすると宣告したが、女優ケリー・マクギリス(Kelly McGilis)をこっそり泊めた家庭があり、論争の種をまいた。

    家庭での照明、冷蔵庫、ストーブはプロパンガスで動いている。ドライヤー、エアコンは見ることがない。暖房はプロパンが多いが、石油・石炭・薪ストーブも使われる。家庭内での電話使用は禁止されているが、隣接の納屋や工場には引いてもいい。

    18世紀に500人だったコミュニティが、いまやペンシルバニア州34郡で人口5万7千人に膨れ上がっている。各世帯の子供の数は平均7人なので、生めよ殖やせよだ。ペンシルベニア州ランカスターは、地図を開くと原発事故を起こしたスリーマイルのすぐ近く(40キロ)だ。映画『目撃者』の宣伝効果でペンシルバニアばかりが注目されるが、オハイオ州ホルムズ郡にも2万7千人という最大規模のコミュニティがある。

    ちなみにアーミッシュは、スイスのアナバプテスト(再洗礼派)の指導者ジェイコブ・アマンに由来する(Amish < Ammann)。オランダ、ドイツ、スイスからアメリカに移住し、話している言語は高地ドイツ語方言の「Pennsylvania Dutch」。「Pennsylvania German」と呼ばれることもある。

    posted by ヒロさん at 23:54 | Comment(5) | TrackBack(0) | Learning English
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