935点!!
私が十数年前に取った点数が940点なので、かろうじて5点差で教師の体面を保っているが、この子はなぜこんなに英語ができるのだろうか。小学5年のときに1年間アメリカの学校に通った実績はあるが、帰国子女の経歴としてはかわいいものだ。両親は日本人で、日本でインターナショナルスクールや英語塾に通ったこともない。
本人に「どうやって英語をキープアップしたの?」と尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。
オーディオブックを聴いていました。
つまり、たった1年の海外体験が起爆剤となり、帰国後にさまざまな英語のオーディオブック(CD)を毎日のように聴くようになる。骨が成長するときに取り組んだものは、驚異的なスピードでマスターできると言われているが、この生徒の場合は、耳の骨が成長するときに、英語の音が耳にグングンと染みこみ、焼きついたかのようだ。
児童文学の英語は、場合によっては大学入試の英語より難易度が高い。「チャーリーとチョコレート工場」、「ハリー・ポッター」、「赤毛のアン」、「不思議の国のアリス」、「若草物語」などを英語で挑戦した人は心当たりがあるだろう。
さまざまな物語をまず耳から吸収し、次に英語と日本語の両方で書籍を読み、何度も読むうちに語彙もほとんどすべてマスターする。映画化されているものはDVDも鑑賞する、という具合に楽しみは加速する。
留学を考えている人は、まず「聞くこと」に比重をかけるべきだ。オーディオ素材は本とCDをセットで揃える手もあるが、とにかくMP3プレーヤーで聞くことに照準を合わせたい人は、「Digital Audiobook」からダウンロードするとよい。月1冊のダウンロードの場合、素材の長短を問わず、最初の3カ月は毎月約600円、4カ月目から約1200円だ。
時事ネタに関心のある人や、お金を一切かけたくないという人は、BBCのPodcastをお奨めしたい。240という膨大なメニューは圧巻で、ニュース、討論、インタビュー、ドキュメンタリー、サイエンス、音楽、芸能などのどこかに掘り出し物が見つかるはずだ。
ちなみに私のお気に入りは「Forum - A World of Ideas」、「Documentaries」、「Music Week」、「Books and Authors」、「Arts and Ideas」だ。
これらの素材をいつ、どこで聞くか。パソコンの前で聞いていても眠くなるし、あまり細切れの時間でも困る。
1つ目の「買い物→炊事」はほぼ毎日発生し、30分〜1時間の枠が取れるので活用している。出かける前に家の中でMP3プレーヤーをスタートし、買い物と炊事の間もずっと聞き続ける。その昔、台所でCDプレーヤーを使ったこともあったが、水回り・鍋・フライパンの音などで聞き取りが難しい。イヤホンで聞くに限る。また、手足を動かしながら聞くとなぜか調子がよい。
このような時間を上手に活用したおかげで、パソコンの中に眠っていた約50冊のオーディオブック(CD500枚)も、徐々に鑑賞が進んでいる。この夏は「Inkheart」、「Lisey's Story」、「Bel Canto」、「Chocolate Run」、「Learning to Swim」などが終了。迎える秋は「Hancock's Half Hour」、「Last Kingdom」、「Life Swap」、「Penny Dip」、「Pair of Silver Wings」、「Ship of Brides」などで“耳読書の秋”を楽しんでみたい。