先日参加した教育関係のセミナーでは、教師の心構えは「5者から6者へ」を強調していた。「5者」とは学者・医者・易者・役者・芸者のことで、教える内容に学識があり、生徒の健康状態にも気を配り、進むべき方向を示し、意欲を引き出すさまざまな演出をし、教壇のエンターテイナーになれ、という意味での「5者」だ。これに加えて、支援者・カウンセラーとしてのコーチにもなれるといいね、という趣旨だった。
自らを振り返ると、私は学者と芸者の要素が強い。医者は小学生では非常に大事だが、高校生ぐらいになると部屋の温度に気を配るとか、寝ている子を上手にたたき起こすとか程度で、あまり為すすべはない。易者は大学受験の分析・指導に関しては初心者だが、長い人生の教育については(勝手な思い入れで)そこそこ語ることはある。コーチングはできるとしても、少人数であることが前提だ。
他者の教育やコーチングというおこがましいことを考え始めると、すぐに自分に跳ね返ってくる。じゃあ、あなたはどうなの? 目標設定は明確? よい協力者・指導者に出会えている? システマチックな手法、進捗の計測、モチベーションの維持はできてる? やっていて楽しい?
『見抜く力―夢を叶えるコーチング』の著者は、平泳ぎの北島康介、背泳ぎの中村礼子、自由形の上田春佳というオリンピック・メダリストを3人も育てた名コーチ。オリンピックを目指す選手の練習メニュー、自己管理、克己心、瞬発力、持久力、精神力etcに比べたら、肩凝りを直すためのメニュー、お腹をスリムにするダイエット、視力を上げるための持久的な訓練など、たいしたことはないように思えてくる。
たとえば、練習方法のひとつに「ストレート・セット」という方法がある。これは20本なら20本を同じタイム、同じストロークで泳いでいくという持久系の練習である。この2、3年は、こうした単調な練習を意識的に増やしているのだ。
肉体的にも疲れ、精神的にも消耗していく中で、いかに単調な練習を我慢して耐えていけるか。こうした地味なトレーニングをすることで、「精神的持久力」といったものが鍛えられるのではないかと思っている。(p97)
肉体的にも疲れ、精神的にも消耗していく中で、いかに単調な練習を我慢して耐えていけるか。こうした地味なトレーニングをすることで、「精神的持久力」といったものが鍛えられるのではないかと思っている。(p97)
以前は「精神的持久力」といった話には耳を貸さなかった私だが、最近ジョギングに目覚め始めたため、単調なトレーニングももっとシステマチックにたくさんやってみるかという気になっている。ただ、指導者なしで「耐える」「我慢する」と頑張ると挫折しやすいので、とにかく“快”を維持していく工夫が必要だ。
走ることがどのようなメカニズムでアンチエイジングにつながるのか、という「学者」の知的武装。ジョギングはMP3プレーヤーで好きなオーディオを聴きながらにする、という「芸者」センス。ジョギングウェアにこだわりがでてきたら「役者」に目覚め始めてきた証かも。