最近は山ほど教材がある。日常生活とはいうものの、誰のどのような日常に的を絞るか。海外旅行に絞ったものは昔から山ほどあるけれど、海外旅行が日常的になる人はまずいない。英語のレベルアップを目指したい20〜30代のOLを狙うのが妥当であろうが、そんな本の1つ、『起きてから寝るまで英語表現700』を読んでみて、ちょっと驚いた。
<第1章:朝> 「曇りだと気分も晴れないなあ」 「二日酔いがひどいなぁ」 「夕べ送ったメールの返事がきていない」 「冬になるとだんだん起きるのがつらくなってきた」 「今朝は、ヘアスタイルがきまらない」 「焦ってはいたらストッキングが伝線しちゃったよ〜」 「コンタクトがなかなか入らない」 「朝食は昨日の残り物でいいや」
英語には「get up on the wrong side of the bed」または「get out of the bed on the wrong side」という表現があるけれど、要は朝から機嫌が悪くて、1日中冴えないという意味だが、わざわざ第1章からそんな表現が満載。
<第9章:健康・ダイエット> 「吹き出物がなかなか治らないなあ」 「うあ、足がすごくむくんでいる」 「髪の毛の傷みがひどいなあ」 「最近肌がかさかさだな」 「あっ、こんな所にしみができてる〜」 「このしわ、なんとかならないかしら」 「最近体力の衰えを感じる」 「生理痛が重くて」 「偏食がたたって貧血になっちゃった」 「ラジオ体操がこんなにも疲れるものだったとは」 「エクササイズのDVDははりきり過ぎで腰が痛い」 「甘いものの誘惑には勝てないなあ」 「年とともに新陳代謝が悪くなるんだ」
う〜ン、こういう表現をしみじみと英語でつぶやきたくない(笑)。「いろんな英語表現を覚えたい」という需要に「人生にはトラブルがつきもの」という固定観念を掛け合わせると、こういう本ができる。
私の思うところでは、「覚える」とは心に強く刻みつけ、感情やイメージを伴わせ、その影響を体全体に波及させていく行為だ。さらに、外界に何らかの念波を発信し、シンクロを誘発する行為だ。
外国語を覚えるのは、もともとは未知の世界に窓口をつくる行為。せっかく外国語を覚えるのだから、日常的に繰り返すのはいいとしても、そこに新たな風をもたらし、憧れを引き込み、ますますハッピーになり、うれしい変革の原動力や清涼剤となるような教材も、どうかよろしくお願いしま〜す。
■追記:私は「ボケ防止ピアノの会」というささやかなグループに参加しているが、「ボケ防止英語の会」もいいかもしれない。実用性をいっさい度外視して、ただ覚えることが楽しいという50才以上の日常を対象にした教材もほしいです。What did I eat this morning? Who am I? Do I have a husband or two? Blah, blah, blah....