
このドラマにたどりつく遠因となったのは、探偵モノの「ヴェロニカ・マーズ(Veronica Mars)」のあるセリフだった。
<Veronica Mars 1-9>
You're jacked up like some hillbilly kid who just stumbled into Daddy's meth lab.(田舎の子が父さんの meth lab を見つけちゃったみたいに、舞い上がってるじゃない)
はて、meth lab とは何ぞや、と調べたところ、覚醒剤メタンフェタミンをつくるラボ(製造場所)のこと。「メタン+フェタミン」ではなく「メタ+アンフェタミン」で、そう、昔懐かしの「ヒロポン」のことではないか!
ヒロポンといえば、私は20代後半に東京・渋谷の会社で働いていたことがある。事務に新潟から出てきたという女の子がいたが、上京する前に「行ってはいけない!」とお母さんにさんざん引き留められた。お母さんのセリフが奮っていて、「東京ではヒロポンの注射を打たれたりするから危ない、行っちゃダメ!」というのだ。(新潟でも相当田舎のお母さんかしらね)そういえば、私もヒロポンというニックネームがつけられたことがあったが、その危なさに気づいてくれる人が少なかった...
というわけで、「ブレイキング・バッド」はドラッグものなのだ。だが、マフィア抗争や麻薬カルテルの話でない。素人の50才の高校化学教師が、ヒロポンを自ら製造してこの業界に参入しようという(ある意味で悲惨な)プロセスが描かれているのでおもしろいのだ。
浮かない生活を送っていた高校教師が末期ガンの診断を受けて変貌する。かつては先端研究者であったので、化学の知識や実験センスは抜群。サーマイトの原料をかき集めて倉庫ドアのカギを溶かしたり、麻薬売人の本拠地に乗り込んで小型爆弾を炸裂させたり、正当防衛で殺した売人を薬剤で「処理」したり、砂漠でクルマのバッテリーが上がっても、電池をみごとに自作したりと、化学好きにはとくにおもしろい。
舞台はニューメキシコ州のアルバカーキ。50代の変身ドラマ、奇想天外なサスペンス劇場として楽しめるのだ!(現在シーズン1と2の観賞を終了)
■このドラマの楽しい教訓
・主人公の製造ラボ(meth lab)は、キャンピング用のたのしいRV車。
・ヒロポンはもともとは「疲労をポン」と取ってくれる大日本製薬のお薬です。
・50才を過ぎたら、ルール無用の本音で生きるべし!
・でも「お金=幸せ」だと思ったら大まちがい。
・覚醒剤ドラマは、人生に「覚醒せよ(Wake up!)」という強烈なメッセージなのだ。
■関連記事
・「神々の糧」:トリプタミン幻覚剤と意識のビッグバーン
・二重らせん構造、知的生命体の大蛇、そしてクンダリーニ