2016年05月06日

トランプ現象の考察2

■トランプは日本人の誰に似ている?

歯に衣を着せないストレートな口調は、橋下徹に似ている、という人もいた。1度も公職についたことのないホリエモンがいきなり首相になるようなもの、というたとえもあった。

トランプは資本家である。今回の予備選挙を自前で乗り切り、100億円ぐらいを使っても痛くもかゆくもない。東北の震災のあとに「100億を寄付する」と豪語したソフトバンクの孫正義ぐらいのマネーパワーが前提となる。

トランプは「暴言」だと言われるが、その発言は実に緻密で、計算され、スピーチは全部で自分で考える。臆面もなく「I'm smart(俺は頭がいい)」と言う。揚げ足取りの質問が入ってもびくともせずに、ブルドーザーのように自分の言いたいことを言い切る。この凄まじいパワーと人間的な魅力は、田中角栄に近いものがある。

さらに、トランプの強みは40年以上にわたる抜群の知名度にある。すでに築かれた圧倒的な知名度なくして、今回の政治活動の成功はあり得ない。(共和党の16人と闘い、1回を除いて常にトップの支持率!)

■レーガンの再来?

アメリカではレーガンの再来か、と言われた。トランプの「Make America great again(偉大なアメリカを再び!)」というスローガンは、ロナルド・レーガン大統領が使ったフレーズの焼き直しだ。ハリウッド俳優上がりのレーガンは共和党では異端児だったが、そうとはいっても、カリフォルニア州知事を2回歴任している。

レーガンとトランプの共通点はなにか?

1)ストレートな口調。2)TVメディアでの人気。3)民主党員の経歴があるリベラルな過去。4)減税主張。5)中絶反対。6)武器所有の権利(憲法修正2条)。7)レーガンは離婚歴のある最初の大統領、など。

■ロジャー・ストーン(Roger Stone)

レーガンとの共通項といえば、ロジャー・ストーン。2015年8月までトランプの選挙参謀をしていた人物だ。

ロジャー・ストーン(Roger Stone)は、政界の闇を知り尽くしている男。ニクソンとレーガンの選挙アドバイザーを務め、ケネディー暗殺の主犯はジョンソン副大統領とする本はベストセラーとなり、ブッシュとクリントンの悪事を暴露する本も執筆。ブッシュ本では(ケネディと同じように)レーガン暗殺未遂事件でも別方向から銃弾があったことや、ブッシュ副大統領のクーデター的な動きも指摘。クリントン本では、ビル・クリントンに約25件のレイプ被害者がおり、ヒラリーが恐喝などあらゆる手段でもみ消しに動いたという話など。

あまりにもヤバイ話ばかりだ。このロジャー・ストーンとトランプ家のつき合いは長く、1964年にトランプの父が共和党のゴールドウォーターを支援していた頃までに遡る。2000年にトランプは、ロス・ペローを後継するべく改革党(Reform Party)から大統領選の立候補を発表(のちに撤回)したときも、参謀はロジャー・ストーン。ブッシュ家を支えたカール・ローブのような存在なのだ。

トランプはインディアナ州の最後の集会でも「Karl Rove is the dumbest human being on earth!(カール・ローブはこの世でもっとも頭のたりない人間)」と高らかに批判。ブッシュ派がいまだに、党大会でミット・ロムニーを立てるなど、トランプを引きずり落とそうとしていることに反応したもの。トランプ勝利の翌日に、元大統領のブッシュ親子は不支持表明、ロムニーは党大会に不参加表明(すべて想定内)。下院議長のポール・ライアンは「今すぐには支持表明できない」と発言。

ロジャー・ストーンはバックで暗躍。「反トランプ」暴動に金を流すジョージ・ソロスの動きや、共和党大会でトランプを引きずり落とす計画を早期から警告。今後のクリントンの暴露のゆくえもニンマリと予言している。




posted by ヒロさん at 17:28 | Comment(3) | TrackBack(0) | 国際政治/謀略

2016年05月05日

トランプ現象の考察1

この3カ月ほど、トランプ現象を追いかけ、主にTV報道(FoxNew + CNN + MSNBC)、共和党・民主党ディベート、トランプとサンダースの党員集会のビデオを数百本眺めてみた。以下、気づいた点をメモ書きする。

■トランプの日本関連の言及

これまでトランプが日本について言及しているのは、1)貿易不均衡(日本は米市場に自動車を売りまくっている)、2)日本の軍事防衛費を全額負担しろ(今はピーナッツ程度の支払いしか受けていない)の2点。

ただ、貿易不均衡の文脈では、日本が最初にやり玉に挙がることはない。トランプの最大の標的は、メキシコと中国だ。メキシコは北米自由貿易協定(ナフタ)によって不均衡が拡大し、中国の場合は世界貿易協定(WTO)に参加させたのがそもそもの間違いと批判。TPPはアメリカを壊滅させるので絶対に認めない。

貿易不均衡のやり玉は、中国(貿易赤字5000億ドル)から始まり、韓国(LG、サムソン)、日本(自動車)、ベトナムに広がり、まれにインドを付け足すこともある。メキシコの貿易赤字は、壁をつくる費用はメキシコに負担させる、なぜなら「メキシコの貿易赤字は年580億ドルで、壁の建設は100億ドルだから」というロジックを説明するときに登場する。

メキシコとの交渉ステップはすでにウェブページに明示してある。交渉に応じないときは、@国境通過のビザ手数料などを大幅引き上げ、A最大35%の輸入関税、さらにB不法移民からメキシコへの送金禁止・差し押さえなどがある。壁建設にあたっては、日本のコマツは使わず、キャタピラを使うという。(過去2カ月で日本企業の名前が強く出たのは、おそらくコマツのみ。自動車ではホンダ、トヨタの言及は今のところない。韓国のテレビの延長でソニーの名前が出たことはある)

追加:その後、ネブラスカ州の集会では、牛肉の38%関税に対抗して「日本の自動車にも38%の関税をかける」と発言。これらはすべて、選挙集会のリップサービスであって、政策スピーチに盛り込まれたものではない。

軍事負担問題では、ドイツ、日本、韓国(米兵26,000人はよく言及される)、サウジアラビアに全額負担させる意向。NATOの「老朽化」を指摘、近代化してもいいが、ヨーロッパに全額払わせる。ISIS退治ではロシアとの協力を歓迎、トランプとプーチンは仲がよい。ブッシュ政権のイラク破壊と、オバマ&ヒラリーのリビア破壊を痛烈に批判。対イラン交渉は弱腰だとしてオバマ批判。中国にはなめられている、中国はサッサと北朝鮮をつぶすべきなのにやらない、おまけに南沙諸島で基地をつくっている(貿易交渉を楯に、この北朝鮮と南沙諸島の2つの問題で決着を図りたいような含み)。

■票集めのポイントは、移民問題と失業率(製造業の空洞化)

シリア難民でヨーロッパが大混乱している最中、オバマ政権は数万人の受け入れを検討したが、トランプは「イスラム教徒の移民入国は当面認めるべきでない」と噛みつく。

アメリカは不法移民問題がすでに極限に達している。不法移民は主にメキシコ国境から入国しており、その数は800万〜2000万と言われる。マスメディアは1100万を採用しているようだが、おそらく実数はさらに多いはずで1500万程度か(トランプの壁建設宣言で、現在、さらに駆け込みの不法越境が進んでいる)。

大まかにいうと、人口3億人の5〜6%が不法移民としてアメリカに居座っている。日本で中国・朝鮮半島系を中心として、600万人が違法に居座っている状況を想像してみてほしい。違法といっても、雇用されている人の場合は、社会保障番号(マイカード)が発行され、税金も払っている。さらに、一部の州では運転免許証も発行されている。

だが、違法には変わりがない。不法移民はいわゆる「きつい」仕事についており、雇用する側としても好都合。この構図は日本を含め、ヨーロッパや中東でも同じ。この不法移民に対する「amnesty(恩赦)」の議論が進行中。つまり、ある程度の年数を居座った人は、国籍を与えようというもの。

「アメリカ領土内で生まれた者は、本人あるいは両親の国籍に関係なく生まれながらにして市民としての資格がある」という憲法修正第14条にトランプは反対している。国家安全保障を理由に大統領命令でこれを保留にする可能性あり。不法移民が子供を産んで、その後、アメリカがその子を85年も面倒を見るというバカな話があるか、ふざけるな、という主張。これに対して、アメリカは移民の多様性で豊かになった国であり、この憲法条項は守るべき(constitutionalist 憲法遵守主義)という議論あり。

今回の選挙では、国境警備隊1万6千人の労働組合がトランプ支持を表明。アリゾナ州では移民政策で強硬派のブリュワー前知事と、マリコパ郡のアルパイオ保安官がトランプ氏を支持、アリゾナ州でトランプは勝利。

不法移民の増加と産業の空洞化は、ビル・クリントンが導入したナフタにあるとする。トランプの集会では、北部州の場合は1990年または2000年以来、製造業がどれほど消滅したか、その比率を読み上げる。一方、先日のカリフォルニアの集会の場合は、失業率や雇用数ではなく、犯罪率のすさまじい増加を数値として読み上げていた。

トランプの票田は、30〜60代の中流層。失業率5%という統計は真っ赤なウソで、実態は20%程度と主張する。20代の投票者は、大学教育の完全無償化などを主張する民主党のサンダーズ(社会主義者)に大量に流れ込んでいる。20代の支持者数は、トランプとヒラリーを合計しても、サンダーズにはかなわないという。

posted by ヒロさん at 20:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | 国際政治/謀略