イギリスのクモの巣は手強い。とくに車のサイドミラーに住みついたクモは、ミラーとドアの間に毎晩、みごとな円網を編み上げる。翌朝に「こいつ、しつこい!」と思いながらも、朝露が玉と散りばめられているときなどは「おぬし、なかなかやるな」と感心してしまう。遊園地にも大きなクモがいるので要注意だ。2004年にはうちの子がクモの巣に絡まる危機一髪の事件があった(写真参照)。クモの巣で遊ぶときは、横糸に触ってはいけない、縦糸だけを上れ、という常識をしっかり教えていなかったわが家の教育の不徹底を恥じるものである。
クモの巣がベタつくのは円状の横糸だけで、中心から放射状にまっすぐに伸びる縦糸はベタつかない。クモが自分の巣の上を歩くときは基本的に縦糸だけを歩いている。また、中心にある「こしき」という場所もベタベタしないので昼寝のハンモックとして最適だ。
一匹のクモが放出する糸は何種類もある。ジョロウグモの場合は、鞭状腺、ビン状腺、梨状腺、ブドウ状腺、管状腺、集合状腺という射出装置があり、横糸、縦糸、枠糸(巣の外枠の糸)、係留糸(外枠と木をつなぐ糸)、捕獲帯(獲物を巻き付ける糸)などをつくり分けている。クモを大切にしている人は、仮に地獄に足を滑らせた場合でも、クモの糸をすっ〜と降ろしてもらえるから大丈夫。これは牽引糸という「命綱」で、ナイロンよりも強い太い糸が2本束ねられている。チョットやソットでは切れないから、いじわるしないで他の人にも登らせてあげて。
クモの巣事件で命拾いしたわが子は、その後クモの研究を続けて、世界中のビルの谷間を自由に駆け巡ることのできるしたたかなティーンエージャーに成長した。そのうち、新作の『スパイダーマン』に出演しているかもしれないので、よろしくね。