◆TVドラマ『Friends』:1-21 Fake Monica
Fake Monica: Hi. I'm Monica.
Monica: Oh. Monica! ...Hi. I'm Mo- ...nana.
Fake Monica: Monana?
Monica: Yeah. It's Dutch.
Fake Monica: You're kidding! I-I spent three years in Amsterdam. (Asks her something in Dutch)
Monica: Um, Pennsylvania Dutch.
モニカが自分のクレジットカードを不正使用している偽モニカを追いかけ、ついにダンス教室でその女性とことばを交わすときの会話だ。自分の名前をオランダ語風の「モナナ」と偽ったが、相手がオランダ語に堪能だったので、「あの、ペンシルバニア・ダッチなの」とさらに逃げを打つ場面だ。ペンシルバニア・ダッチを話す人=アーミッシュ、とピンと来れば、ここで1回多く笑えるところ。
◆TVドラマ『Sex and the City』:5-7 Big Journey
Samantha: l'm eating with the Amish? Every time we stop, good-looking people get off and ugly people get on. This is the train to ugly.
アーミッシュは『Sex and the City』にも登場する。サンフランシスコ行きの長距離列車に乗り込んだ主人公が、食堂車でアーミッシュの夫婦と同席し、サマンサが差別的な吐き捨てコトバを使うシーンだ。テレビもねっ、電気もねっ、おらの町には裁判もねっ、という人たちなのでテレビでおちょくってもOKという判断なのだろう。
個人的に今なぜアーミッシュかというと、高校英語のテキストでもうすぐペンシルバニアを取り上げるからなのだ。
◆速読速聴・英単語 Basic 2400:「36. ペンシルバニアのアーミッシュの人々」p288-289
フィラデルフィアに行く途中、ペンシルバニア州ランカスターに寄るのを忘れないでください。ランカスターはアーミッシュの居住地の真ん中にあります。アーミッシュの生活については、人気映画『目撃者』で描かれています。アーミッシュの人々は、大昔のように簡素な生活をすることを神が望んでいる、と信じています。
アーミッシュの人々の小屋や農家には、電気がありません。この人たちは車を持たず、畑でトラックもトラクターも使いません。時には、他の人の車に乗ったり、バスやタクシーを使ったりすることもあるでしょう。でも、普段は歩いたり自転車に乗ったり、馬が引く馬車で田舎道を走ったりします。
このテキストの読み方は微妙だ。農家には電気はないが、農家以外には電気があるということなのか。農家にはトラクターはないと考えてもいいのか。正確な知識を仕入れる必要があると思い、2009年5月出版の『アーミッシュの昨日・今日・明日』を参照することにした。
同書によると、ランカスター・アーミッシュの約3割が農業で生計を立てており、牛乳生産が主な収入源だ。公共の電気は使用しない方針なので、ディーゼルエンジンで動く冷蔵設備つきのタンクに牛乳を保存している。よって「電気がありません」という記述は誤りだ。
約3割が農業だとすると、残りの7割の職業は何なのか。1980年以降に大きな3つの流れが現れた。1つ目はパン屋、靴屋、金物屋、花屋、修繕屋、工芸品店、健康食品店、キルト店などの小規模家内産業。2つ目は町工場のようないくぶん大きめの産業で、農業機器、水圧機器、家具の生産。3つ目はランカスター郡の建設ラッシュで需要が増えた建設労働者。
大工、配管工、塗装工にはなれるが、弁護士、医者、獣医になるのは不可能だ。「オルドヌング(ordnung)」という規約集が、裁判を起こすことや、高校・大学に行くことを禁止しているためだ。ただし、独学によるコミュニティ内の会計士は存在する。出産は4割がコミュニティ内の助産婦、6割が外部サービスを使用する。
摩訶不思議なことに、畑のトラクター使用は不可だが、納屋ではOKだ。1880年代以降、アーミッシュ農家は脱穀機の動力としてスチームエンジンを使用しており、“小さな内燃エンジン”を使った電動のこぎり、肥料粉砕機、水圧ポンプ、洗濯機の使用は問題ない。トラクターはこれらの動力源として使われることが多く、「畑ではトラックもトラクターも使いません」という記述は正しい。
ドイツ語で規則を意味する「オルドヌング」は時代と共に改訂されていく。自動車・トラック・バスは乗車するのはOKだが、所有と運転は禁止。『Sex and the City』のように列車旅行は楽しんでもいいが、飛行機はダメ。テレビカメラでポーズを取るのは禁止なので、映画『目撃者』はアーミッシュの協力なしに進行した。教会指導者は撮影に協力したものは破門にすると宣告したが、女優ケリー・マクギリス(Kelly McGilis)をこっそり泊めた家庭があり、論争の種をまいた。
家庭での照明、冷蔵庫、ストーブはプロパンガスで動いている。ドライヤー、エアコンは見ることがない。暖房はプロパンが多いが、石油・石炭・薪ストーブも使われる。家庭内での電話使用は禁止されているが、隣接の納屋や工場には引いてもいい。
18世紀に500人だったコミュニティが、いまやペンシルバニア州34郡で人口5万7千人に膨れ上がっている。各世帯の子供の数は平均7人なので、生めよ殖やせよだ。ペンシルベニア州ランカスターは、地図を開くと原発事故を起こしたスリーマイルのすぐ近く(40キロ)だ。映画『目撃者』の宣伝効果でペンシルバニアばかりが注目されるが、オハイオ州ホルムズ郡にも2万7千人という最大規模のコミュニティがある。
ちなみにアーミッシュは、スイスのアナバプテスト(再洗礼派)の指導者ジェイコブ・アマンに由来する(Amish < Ammann)。オランダ、ドイツ、スイスからアメリカに移住し、話している言語は高地ドイツ語方言の「Pennsylvania Dutch」。「Pennsylvania German」と呼ばれることもある。
「ペンシルバニアにはオランダ人コミュニティーが在る」位に思ってましたがアーミッシュのことでしたか。またまた勉強になりました。
それにしても、喜劇とはいえ、拾ったクレジットカードでダンス教室に通う偽モニカおばさんの性格が妙にリアルで住宅バブルに沸き借金で暮らす当時の米国庶民感覚設定には驚いたものです。
盲腸になってもひまし油を飲まされそうな医療事情は困りますが、目撃者の自家用馬車は素敵でしたね。また、外敵を集団で排除する住民の姿勢は納得でしたが、彼らがコミュニティーを維持できたのも、白人のキリスト教徒だったからなのでしょうね。でも、あんな彼らでも徴兵に応じて各種戦争に赴いたのかちょっと気になりました。それとも全員聖職者扱いで忌避できたのでしょうか?
>あんな彼らでも徴兵に応じて各種戦争に赴いたのかちょっと気になりました。(寝太郎さん)
彼らはすべてConscientious Ojbectorという「良心的な兵役拒否者」です。以下、ご参考まで。
http://www.religioustolerance.org/amish2.htm
松岡正剛の千夜千冊:「アーミッシュ」
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0645.html
『アーミッシュの子供たちは8学年のワンルーム・スクールハウスで学ぶようになっている。最も大きいアーミッシュ・コミュニティのあるオハイオ州ホルムス郡には、ワンルーム・スクールハウスが55校もあるらしい。しかしアメリカの教育制度とはまったく関係がない。
授業はほとんどが自習にもとづいている。手をあげて自分の学習を進めるのが子供たちの自主性なのである。この例に代表されるように、アーミッシュではすべてが自律的に動いていく。そのリズムにこそアーミッシュの日々がある。
ふつうの社会学で考えれば、このような生活が成立するには強靭な信仰か支配か、あるいは豊かな生産力がなければ維持できないと見えるはずである。ところがアーミッシュはつねに自立し、自律してきた。その秘密について本書は詮索などしていないけれど、おそらくは相互扶助システムこそがアーミッシュを支えてきたのだとおもわれる。
しかし、このクロポトキンもO・E・ウィルソンも武者小路実篤も提唱したシステムは、歴史的にはめったに成功していない。ではなぜアーミッシュは美しい日々を送っていられるのだろうか。
答えはどうもわからない。ただ、教会がないことがひとつのヒントになるのかもしれない。お祈りは隔週日曜の各自の家の持ち回りなのである。このことからハウス・アーミッシュという呼称も生まれたのだが、とはいえそこにはビショップ1人、ミニスター1人、ディーコンが1人いるだけなのだ。だいたいこの単位で20〜30の家族がひとつのグループをつくっているだけなのである。』
日本のバラエティー番組なのですが、アーミッシュを扱った映画を紹介しています。
細かく分けてUPされていましたので、検索結果のリンクを貼ります。
内部的には「教会という権威の腐敗が無いからコミュニティーが維持されている」のかも知れませんが、聖書原理主義=イスラエル擁護派のように、何等かの政治的目的の為に維持されているような感じを覚えました。
「16歳で自由得たら、周囲の堕落した世界で自由を味わった後アーミッシュに成る」という若者の発想が興味深かったです。
http://www.youtube.com/view_play_list?p=5A436D84616E3C0A&search_query=%E6%9C%AA%E5%85%AC%E9%96%8B%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%82%92%E8%A6%B3%E3%82%8B%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%80%80%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5
寝太郎さん、ありがとうございます。「松嶋×町山 未公開映画を観る」で紹介された『Devil's Playground (2002)』というドキュメンタリー映画は大変参考になりました。
アーミッシュ社会に生まれた子供は5〜13歳で8年間のワンルーム学校へ行き、13〜15歳で中学校に行く。そして16歳の誕生日以降は「ルムシュリンガ(rumspringa)」という悪魔の遊園地(=一般社会)を体験する期間があり、その後、洗礼を受け入れてアーミッシュ社会の一員となる。“歩留まり率”は9割といいますから、非常に高い。
1割はコミュニティを離れるが、その理由は「進学」と「恋愛」。家庭ではテレビ・ラジオがなく、聖書以外に本も読まないので、社会情勢に疎い。12歳までに聖書以外の絵本・童話・小説を読む機会がなく、カルヴァン派の予定説、終末論を固く信じ込まされている。
16歳からパーティ、音楽、携帯、テレビ、映画、セックス、車、酒、麻薬・・・と何でもありだが、麻薬などにはまると人生の破綻が待っている。ただ、オハイオ州やペンシルバニア州のド田舎なので、悪にはまると言ってもその程度はかわいらしい。数カ月を経て、いい子に戻ってしまうのがほとんど。若者が「悪魔の遊園地」を捨てるときに心残りなのは、1)自動車と運転免許、2)自由な服装、3)音楽、など。
アーミッシュの青少年をロサンゼルスやハリウッドなどの大都会に連れて行く企画をやったところ、9割はアーミッシュを捨てて元に戻らなかったという(番組中の町山コメント)。さすがにファッション、エンターテイメントなどの都会の味を知ってしまうと、元に戻れないようだ。