2009年08月07日

大人のための「チョコレート工場の秘密」

現在『チョコレート工場の秘密(Charlie and Chocolate Factory)』を日本語と英語で交互に読んでいる。さらに1971年と2005年の映画化作品にも目を通しているが、これは面白い。

2005年の映画では、『パイレーツ・オブ・カリビアン』で大ヒットのジョニー・デップ(Johnny Depp)がチョコレート工場の謎の経営者ウィリー・ワンカ(Willy Wonka)を演じている。ジョニー・デップは2000年の『ショコラ』でも脇役で出演しており、“チョコレート的”に大幅なグレードアップだ。

私もチョコレートマニア(中毒)のような人間なので、共鳴するところはたくさんある。ウィリー・ワンカの工場に招待されるラッキーな5人の子供たちの中には、お菓子中毒でブクブクに太っている Augustus Gloop とか、1年中ガムを噛んでいる Violet Beauregarde などがいる。

柳瀬尚紀訳では、Augustus Gloop を「オーガスタス・ブクブトリー」と意訳している。「aug-」は増大を意味する語根で、さらに「glop」がドロドロ、「goop」がベタベタなので、デブ・ドロドロ・ベタベタを意識して付けられた名前に違いない。

Violet Beauregarde の名前は紫色のバイオレットで、苗字はフランス風の「これ見よがし beau + regard」なので、全身がブルーベリー色に変色していく運命を暗示している。

原作も映画も高校英語の授業に使えるではないか、と目論んでいるところだが、少々気になることが出てきた。たまたまの偶然でイギリスの小説『Chocolate Run』(邦訳なし)を読んでいたら、「shagger」と「wanker」という単語が出てきた。前者はイギリスのスラングでエッチをしまくる人、後者は1人でしまくる人の意味だ。一方、ウィリー・ワンカの「willy」はイギリスの幼児語で「おチンチン」の意味で、「wonka」 は wanker とほぼ同じ発音だ。

作者のロアルド・ダールは子供心を忘れない、いたずら大好きな作家だが、児童文学の主人公の名前にこんなはしたない名前をつけるなんて、あんまりじゃないの!!・・・と、頭に血がのぼった私だが、あれこれと調べてみての結論は以下のようになった。

『Charlie and Chocolate Factory』が書かれたのは1964年で、このときに「wanker」という隠語はまだ普及していなかった。「willy」はウィリアムの愛称という言い訳は立つものの、「チンチン、ぶ〜らぶら」を意味する「willy wonky」を元にしたという見方が有力。ということで、ウィリー・ワンカという名前の意味は「チンチン・ブラブラおじさん」に落ち着きそうだ。

「willy wonky」を扱ったBBCの子供向け番組はこちら。

■チンコレート工場のつぶやき
もしも日本の児童文学で、マラ・ベッチョさん、オソソ・ホウミさん、ガモウ・ダンベさんみたいな名前が出てきたら、どうしよう・・・

posted by ヒロさん at 23:50 | Comment(5) | TrackBack(0) | 言語学&コトバ遊び
この記事へのコメント
TITLE: 無学ながら
初めまして、ちょいと失礼いたします
WonkaとWankerとは違う発音ではないでしょうか?
Wonの”o”はWantのa、また“Wanker”の”a”はAppleのaと
おなじ発音ではないかと。
映画でもそう発音していたと思いますし、
またもしもそこまでアブナイ内容であれば、
とてもジョニーデップやヘレナボーナムカーターがでるような
「普通の」映画として製作できるはずはないような気もするのですが…
もしも間違いでしたらばご容赦下さい。
Posted by NightPleasure at 2009年11月09日 00:04
TITLE: >無学ながら
>Wonの”o”はWantのa、また“Wanker”の”a”はAppleのaとおなじ発音ではないかと。
一般に“wo”の発音はwonderなどの「ワ」で、“wa”の発音はwashなどの「ウォ」です。
ただ「wonky」の場合は「ウォ」の発音で、「wanker」という危ない単語(辞書を引いてください)と母音が同じです。もし「wanker」という単語を意識させるような狙いがある映画ならば、大問題でしょう。

しかし「チンチンブラブラ」のほうは「willy wonky」で、危ないフレーズというよりも、微笑ましいフレーズ。音は違っても綴り字から、あ〜そっか、と頷くところ。しかもイギリス方言ですから、アメリカで大騒ぎされないのですよ。この映画は『Willy Wonka and the Chocolate Factory』として1971年にも製作されています。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年11月09日 14:01
TITLE: ごめんなさい
ご趣旨はわかりました。たしかにWillyがつけばニヤリと言うわけですね。
ただ一点だけ、私も英国に住んでいましたが、
私の知る限り英国人は大学の英語講師を含め、
wankおよびwankerのaはaとeの中間の音
(つまりappleのaと同じa)で発音していました。
一方Wonkaの"o"は「オ」に近い発音(米国だと「ア」に近くなる音)ですよね。
これ以上書いてもどちらにしろご迷惑でしょうから、もうこれ以上本件は投稿いたしません。失礼いたしました。これからも貴ブログ、勉強・楽しみに拝読させていただきます。
Posted by NightPleasure at 2009年11月10日 00:16
TITLE: こちらこそ、ごめんなさい
>私の知る限り英国人は大学の英語講師を含め、wankおよびwankerのaはaとeの中間の音
>(つまりappleのaと同じa)で発音していました。

そうなんですか。私はこの単語はオーディオブックで一瞬聞いただけで、実際の会話で聞いたことはありません(危ない会話ですから)。まして大学の英語講師から聞くなんて想像もできません・・・ので、私も無知でごめんなさい。

本文の<「wonka」 は wanker と同じ発音だ>の部分は、<ほぼ同じ発音だ>に訂正しておきます。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年11月10日 14:14
Charlie and Chocolate Factoryですが・・・
Charlieはコカインの隠語、Chocolateは大麻の隠語。
で、このサイトで知ったwillyが「チンチン、ぶ〜らぶら」で、
ウィリー・ワンカという名前の意味は「チンチン・ブラブラおじさん」w
つまり、この映画はこっそりと・・・

「チンチン・ブラブラおじさんのコカイン・大麻工場」

って題名にしていたということですね。勉強になりました。
この映画が大好きな娘たちには教えられませんがw
Posted by アジャパー at 2016年12月10日 03:32
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