2009年07月16日

「演劇は道具だ」:表現の基本は、ウソつきの自己紹介から

人はなぜ演劇をやるのか。「みんなが私に関心を持っている」という自己陶酔&自己顕示欲の強い人は、演劇なんてやる必要ない。が、人はどっちみち「見られて生きる」存在なので、どうせ見られるなら、たまには見られることを意識してみようか。ついでに、もっと見ることも意識してみようか。

『演技は道具だ』は、みる、すう・はく、ふれる、たつ、の4章で構成される軽妙な語り口の演劇実践論だ。第3章の「ふれる」では、この世の自己紹介が何でこんなにつまらないの、とぼやいてみせる。「ふれる」ところの位置が、あまりにも浅すぎるからだ。

著者の提唱する3つの自己紹介とは、以下のようなものだ。

  • 何周も自己紹介する。
  • うその自己紹介をする。
  • 他人のことを取材し、それを発表する。

    「はじめまして。今回、とりまとめ役をさせていただいた、井上です。鎌倉に住んでいます。よろしくお願いします」・・・と、そそくさと終わるのが普通の自己紹介だが、2回目、3回目、4回目と回ってきたときに、人は何を話すか。その展開の多様さと、一人ひとりの表情がおもしろい。大人数の場合は、「何周も」はちょっと難しいが。

    「うその自己紹介」はルールが1つあり、「私は宇宙人だ」のような明らかなウソはダメで、本当でないことをさも本当であるかのように語ること。さらに質問を受けて、それに答えること。無意識にうちに誰でもついている小さなウソがあるが、敢えて意識的に初対面でこれを実践する。ウソつきは泥棒、じゃなくて演技の始まり。(私は、日テレ系、土居まさる司会の『ほんものは誰だ』を思い出す)

    3番目はいわゆる「他己紹介」だ。まず<Aさん→Bさん、Cさん→Dさん>という形で取材の時間を取る。次に<Bさん→Cさん、Dさん→Eさん>の時間をとり、全員をカバーする。最後に他己紹介だが、伝聞調にしないことがルール。紹介される内容も面白いが、紹介している人の声・表情・しぐさもまた面白い。(同じ取材でも、朝日と産経の声色や強調される事実は、そりゃあ、違うもの)

    この練習は、英会話やメディアリテラシーのテーマでも使えるかもしれない。

  • posted by ヒロさん at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ無し
    この記事へのコメント
    コメントを書く
    お名前: [必須入力]

    メールアドレス:

    ホームページアドレス:

    コメント: [必須入力]

    認証コード: [必須入力]


    ※画像の中の文字を半角で入力してください。

    この記事へのトラックバック
    ×

    この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。