2009年05月31日

斬れる英語をめざし、今日も語源で英単語をぶった切る!

私が担当する高校2年と3年のクラスでは、授業中に電卓のようなものがカタコトと動いている。電子辞書だ。授業中に使用しているのは数人だが、ほぼ全員が電子辞書を保有している。このうち、ほぼ全員が紙媒体の英和辞典を持っていない

電子辞書は持ち運びが便利だ。キータッチに慣れれば、検索も速い。発音も聞ける。用例などの本文検索も可能だ。英和と同時に和英も使える。国語辞典・外来語辞典・連語時点・英英辞典も同時に検索できる。

私は放任派だが、教師の中には「電子辞書を使ってもいいけれど、紙の辞書も必ず持ちなさい」と指導する人もいる。辞書という文化に慣れ親しまないのはまずい、紙の辞書の方が全体を一望できる、図版が豊富だ、アルファベットの位置関係や重み(pは後半にある、sは厚い、など)を理解できる・・・などが理由だ。

私は長年、研究社の「リーダーズ英和辞典」にこだわってきたが、語源の解説があることが理由だ。どんなに用例が図版が豊富でも、語源が明示されていない辞書はいただけない。

だが、ネット時代になって語源検索もかなり便利になってきた。私が常用している Online Etymology Dictionary は優れものだ。このオンライン辞書を使ったリサーチを生かし、語源を理解しながらボキャブラリー・ビルディング(語彙拡大)を試みる授業をやってみた。

たとえば、「sk-, sc-, sh-」で始まる単語は北欧起源のもので、大半が「切る」ことに関係がある。もともとは「sk-, sc-」(スクッ)という音だったが、k→hの転化で「sh-」(スフ、シュ)という音と綴りも生じた。

古代社会では服は動物の皮(skin)を剥ぎ取ってワンピースをつくっていた。上下を分けた方が便利と思い、スパッと切ると、上がシャツ(shirt)になり、下がスカート(skirt)になった。丈は両方とも短く(short)なったのは言うまでもない。究極的に短い下着(scanties)は恥ずかしいけど。

切るときには鋭利(sharp)なハサミ(scissors, shear)を使いましょう。人に着せたままで切っちゃうと、その人の皮膚を傷(scar)つけるので要注意。ブシュッと串刺しにしたいときは<skewer>を使ってね。

皮をひきはがすのは<skin>だけど、ウロコを取るのは<scale>、脱皮するのは<shed>、鞘や殻を取るのは<shell, shuck>で、髭を剃るのは<shave>。これはたいていは共同作業なので、分け前(share)の分配はしっかりね。

切るといえばなんといっても木材。丸太をくり抜いて舟(ship)をつくり、木彫り(sculpture)を仕上げ、あらゆるものを形(shape)づくった。木をひっかいて文字を記録したり(script)、20単位で数えたり(score)。楽譜がどうして「スコア」と呼ばれるのか、よ〜く考えてみて。

ひっかいた(scratch)話といえば、こするのは<scrape>だし、ゴシゴシするのは<scrub>だ。スケート<skate>のようにスイスイ滑ったほうがいいんじゃない? トランプをシャフシャフするのは<shuffle>だけど、勝ち負けにこだわると、つかみ合いのけんか(scuffle)や、ラグビーのスクラム(scrum)のようになっちゃうよ。

けんかで怒り狂って、床にものをばらまいたり(scatter)、食器を粉々に割ったり(shatter)、家具を揺すったり(shake)、夜中に叫んだり(scream)、それでも済まなくて金切り声を出したり(shriek)しないでね。

切ることは、すなわち分かつこと。しっかりと楯(shield)や壁(screen)をつくって、安全なシェルター(shelter)をつくりましょ。シェルターは敵の攻撃をかわすことのできる水辺(shore)がいいかも。

さて、勉強もくたびれたのはおやつにしようかな。冷蔵庫のハーゲンダッツをダブル・スクープ(scoop)しようか、それともスキム(skim)ミルクにしようか。

今日のまとめ。「切る」ことは剥いだり、削いだり、刺したり、刻んだり、創ったり、とみんな「刀」を意味するリットウがある。「分ける」にも刀があることを忘れないでね。

今日の話が絵巻物(scroll)のように面白かったという人は、このページを印刷してファイルにスクラップ(scrap)。つまらなかった人はシュレッダー(shredder)にぶち込んでちょうだい。

分かった?

■補習:
スカッド(scud)ミサイルも、肩(shoulder)も、スキー(ski)もみ〜んなお仲間。でもスキューバー(scuber)ダイビングは、self-contained underwater breathing apparatus の略だから誤解しないように。


posted by ヒロさん at 23:09 | Comment(16) | TrackBack(0) | Learning English
この記事へのコメント
TITLE: 英語は暗記科目?
こんにちは。
英語は他ヨーロッパ言語に比べて発音に例外が多いですね。
使用人口が多いからか、熟語などは語源を越えて 
あらかじめ知ってないと読み解けないのが多いし。
学習に暗記を要する割合が、かなり高い言語なんだなと改めて感じます。
自主的に学んだ独語・仏語・伊語はそれなりに使えるのですが、
英語が未だに駄目です。
子供の頃の英語の先生が大嫌いで、英語と聞くとその頃の記憶モジュールが
作動し 私を苦しめます。
なので後に英語嫌いを克服する目的で 他の言語を猛烈に学びました。
習得法や語源などどこか共通項があるはずだと。
しかし数十回 米英に行っても、英語力は二十年ほどまるで変化なし。
嫌いという感情が全てを不可能にしているのは自覚しているのですが、
何か効果的な学習法はないものかと.....。
911でも名前を聞いたチョムスキーの生成文法、言語論は、
どうにも信用できないですね、私は。
Posted by ヤパノロギー at 2009年06月01日 03:29
TITLE: 英語の長〜い、道程
ドイツ語に習熟していれば、今回のsc-, sh- の意味の類推は楽勝。さらにフランス語、イタリア語がわかれば、文章を読んでいてほとんどの英単語の意味は想像がつきます。(若干のイマジネーションが必要ですが)

言語学者以外の人が、チョムスキーやってもしょうがないでしょ。統語法もドイツ語とフランス語がわかれば、英語なんてチョロイものです。

いわゆる、on, off, with, up の組み合わせによる熟語は、コアとチャンクあたりで攻めてみては? 大修館書店『英語感覚が身につく実践的指導―コアとチャンクの活用法』とか。

音素数の大小は、英語>ドイツ語>フランス語>イタリア語>日本語。ほとんどの日本人は発音が苦手。英語の音と感覚・感情がピタッとつながらない。詩の朗読、好きな英語の歌の歌詞をword by word で聴き取る、山ほどあるテレビドラマ(お勧めは20〜25分もの)をたくさん見る、オーディオブックで小説を聞く・・・・

文化背景では、聖書、マザーグース、シェークスピアが3本柱。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年06月01日 09:06
TITLE: インターネットが漢字ばかりになってたりして
sk,sc,sk … 鋭い切れ味ですね。北欧起源の言葉がこんなにあるということは、ノルマン・コンクエストの影響なんでしょうね。

私は、フランス語を少しだけやったのですが、綴りと発音の対応が強いので、意味はわからなくてもフランス後の音読はそれらしくできてしまいます(^_^;)

大仏帝国か大伊帝国が覇権を握っていれば、もうすこし語学学習も楽だったのかなと思います。そんなこと言ったら、大日本帝国の覇権は無理でも、中華帝国が良かったのかな。
そしたら、インターネットはほとんど中国語で、読むだけならもう少しがんばれば何とかなるでしょう、なんて、そうなってたら真っ先に植民地か(^_^;)
Posted by SeaMount at 2009年06月01日 18:41
TITLE: 生成文法か認知文法か
英語の先生から直々のご指導ありがとうございます。
コアとチャンク関連本、日本から取り寄せて読んでみたいです。
本文語彙の話題とは飛びますが、「読み書き」と「会話」の技術はかなり違いますよね。

仏語は英語と6割くらい語彙が共通してますからボキャブラリー量は確実に増えていますし、英文読書力は格段に上がってはいます。
(シェークスピア時代の英文読解は、ドイツ人の方が容易いかもしれないですね。)
しかし会話は駄目なんですね。
フランス人イタリア人でも英語できない人大勢いますね。

仏伊独の動詞の人称変化。
独語の前置詞、形容詞、冠詞、名詞にまで至る厳格な格変化は非常に論理的で
一部分を聞き逃して(読み落として)も、
他のパーツ情報から全体の意味を察することが容易にできます。
それに比べて英語の文法は(暗記していないと)意味不明な障害にぶつかること多く、
たったこれだけの情報で、きめ細やかな意思疎通が果たしてできるのだろうか、
とつい余計な思いが巡り疑ってしまうわけです。

いざ喋ろうとすると語彙は脳のバッファに多数登ってはくるのですが、
どう繋げるかで、迷って会話が滞りがちになります。
これは多言語を学んだ障害の一つで、
英語しか知らなかった頃は比較して迷うことなどなかったです。
それら差異を明確にしようと 文法整理に行き着くわけですが、
英語の例外や慣用句の多いこと.......暗記比率が一番高い言語なのか.....と。

一時「聞けば話せる」という安易なCD教材が溢れたのは
チョムスキーの生成文法が念頭にあった動きだと私には思えます。

英語学習には直接利がなくとも、
哲学との絡みで接すると、言語学は万人向けの興味深い学問だと思いますよ。
ちなみに私は認知文法派を強く支持します。
Posted by ヤパノロギー at 2009年06月01日 19:02
TITLE: sk, sc は6〜11世紀にデンマーク人がもたらしたもの
>sk,sc,sk … 鋭い切れ味ですね。北欧起源の言葉がこんなにあるということは、ノルマン・コンクエストの影響なんでしょうね。(SeaMountさん)

いや、違うんです。screen のようにゲルマン→フランス→イギリスの経路をたどったものもありますが、大部分は1066年のノルマン・コンクエスト以前の流入です。4世紀ごろ、フン族に押されてゲルマン人の大移動が始まり、5世紀半ばからドイツ北部の住民(アングル人、サクソン人)がブリテン島に渡っていきます。その後、6〜11世紀の間にデンマークなどの北欧人(デーン人)も定住し、ブリテン島では「アングル・サクソン対デーン」の大対立が続きます。「sk-,sc-」はデーン人の言葉で、アングロサクソン化で訛ったのが「sh-」です。

例えば ill と sick はどちらも病気ですが、illはデーン語で、sickはアングロ・サクソン語。このような語彙の上に、11世紀から300年間、フランス語が公用語になりますので、フランス語の嵐になります。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年06月01日 20:13
TITLE: 今週のジョーク「英語が難しい理由」
今週のジョーク「英語が難しい理由」:Why English is so Hard to Learn
http://longtailworld.blogspot.com/2009/05/why-english-is-so-hard-to-learn.html
The bandage was wound around the wound.(傷口にバンドエードが巻いてあった)
We must polish the Polish furniture.(ポーランド製家具を磨かなくてはならない)
The soldier decided to desert his dessert in the desert.(兵士は砂漠でデザートを平らげることにした)
I did not object to the object.(その目的に反対だったわけではない)
・・・・・・・
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年06月03日 07:56
TITLE: もし元寇が成功していたら、どんな原稿が書かれていたのでしょう
う〜ん、やっぱり英語は難しいのですね。・・・・ ってとらえるよりも、駄洒落のネタができたととらえるべきか(^^)/ 

高1の子供に話してみよう。嫌な顔をされるかな(^_^;)

> ノルマン・コンクエストの影響なんでしょうね。(SeaMountさん)
> いや、違うんです。・・・・

訂正、ありがとうございました。しかしイギリスの歴史も複雑ですね。それが、言語に現れていると考えていいのでしょうね。

もし元寇が成功していたら、日本語はどうなっていたのでしょうか。今でも、和語と漢語はありますが、ますます和語は追いやられたのかなぁ
Posted by SeaMount at 2009年06月03日 09:05
TITLE: 高校生にもよくわかる「英語の歴史」サイト
日本が外来王朝に徹底的に征服されていたら、大和言葉(ケルト語)は駆逐されて、南部中国語(西ゲルマン語)が優勢となり、さらにモンゴル語(フランス語)が300年も公用語となって、そのあとにスペイン語による徳川バテレンキリスト教大国ができていたかも。

以下のサイト(pdfファイル)はとてもいいですよ。
http://zen.shinshu-u.ac.jp/modules/0004005001/main/05.pdf

私は「デーン語」と書きましたが、業界用語では「ノルド語」。17ページの説明で
「アングロサクソン語=scrub, skirt, kist  古ノルド語=shrub, shirt, chest」
となっているが、これは逆と思われ。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年06月03日 10:31
TITLE: “属国語”
シミュレーションありがとうございました。私のイマジネーションでは、ついて行くのが大変ですが(^_^;)

紹介していただいたスライドも興味深かったです。「なんで、英語はこんなにややこしいんだ」というところから欧州史にアプローチするのも面白いかもしれません。

それにしても、英国史と英語というのは、つくづくややこしいですね。でもそのややこしい歴史が、強大(で残酷な)大英帝国を生んだということなのかもしれませんね。それがまた、残酷な次の帝国に引き継がれたのでしょうか。先住民虐殺のトラウマが、戦争に駆り立ててしまうという岸田秀説もありますが、・・・・

とここまで書いて、カタカナ語(英語起源日本語)を4個も使ってしまいました。“属国”の宿命でしょうか、・・・・ 福沢先生スミマセン
Posted by SeaMount at 2009年06月05日 05:39
TITLE: スミマセン、“属国語”は5個でした
「トラウマ」のところは後から書き足したので、4個としてしまいました。ちなみに、トラウマ(trauma)は、古代ギリシア語で「傷」の意とのことですね。

ドジッてもただでは起きないぜ。そのトラウマに負けずに虎や馬のようにたくましく生きよう(^^)/
Posted by SeaMount at 2009年06月05日 05:47
TITLE: 「漢字で処刑方法がわかる」
このエントリを見てこんなことを思い出しましたw

「鼻」に「刂」(りっとう)で「劓」(鼻削ぎの刑)とか
「月」に「賓」で「臏」(足の筋を切る刑)とか

中国の古典を勉強した成果が、そんなんばっかかい!
Posted by SY1698 at 2009年06月07日 12:05
TITLE: >「漢字で処刑方法がわかる」
中国古典を勉強すると、耳を削ぐ、目をえぐる、股裂きの刑にする・・・とか、高尚な語彙が深まっていくわけですね。私は以下の3つぐらいでお腹いっぱい。

羊をノコギリでメッタ切りにする「義」
針で目を突き刺して奴隷にする「民」
異邦人の生首を持って歩く「道」
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年06月07日 18:14
TITLE: こんなのもあります
授業では使えないでしょうけど。
http://www.hotforwords.com/
Posted by she's hot! at 2009年06月11日 22:22
TITLE: 脱字
appratus→apparatus
aが抜けているようです。

訂正だけではなんなので、ちょっと感想。
お、この人はできる!、と読ませていただきました(何様やねん(^_^;)
会話も含めてとても勉強させてもらいました。
Posted by 通りすがり at 2009年07月31日 09:20
TITLE: >脱字
校正ありがとうございます。本文訂正します。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2009年07月31日 09:57
TITLE: shit も分けること
ローズ・ジョージ著『トイレの話をしよう』p26より引用
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「クソ(shit)」という言葉にみんなぎょっとしなければいいのに、と思う。「クソ」は高貴な語源を持つ言葉で、ギリシャ語の「skihzein」やラテン語の「scindere」、あるいは古期英語の「scitan」から派生した。どれも分けるとか、分離するという意味である。
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2010年05月05日 23:24
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