2006年08月29日

ブッシュ・ネオコン政権を支えるキリスト教右派の狂信

ユナイテッド93便から掛けられたとされる電話で、とても気になることがある。『Let's Roll(さあ、いくぞ)』という最後の言葉を残したトッド・ビーマ(Todd Beamer)。そして、その彼から電話を受け取った電話会社Verizon社のリザ・ジェファソン(Lisa Jefferson)。両者ともに「福音派」のキリスト教徒だったというのだ。

「撃墜された」ユナイテッド93:その証拠と証言の数々
  同社のスーパーバイザーであるLisa Jeffersonは、Beamerと同様、福音派キリスト教徒だった。彼女は15分間にわたる彼との会話を刻銘に記憶している。
  Jeffersonのファートネーム「Lisa」が、Beamerの妻の名前と同じことがわかったとき、Beamerには2人の男の子がいること、3人目の赤ちゃんももうじき生まれること、でも家には無事帰れないかもしれないこと、そして彼の信仰に関する話が明らかに語られたことだろう。
  93便で命を落とす運命を覚悟したとき、BeamerはJeffersonと一緒に「主の祈り」と「詩篇23節」を口ずさんだという。

敬虔なキリスト教徒として、人生最大の危機を前に、聖書の言葉がスラスラと口について出てきたという。彼らがどの程度の「福音主義者」だったのかわからない。一般的な定義では、以下のような信仰の人たちである。

ウィキペディア:「キリスト教根本主義」
  聖書を文字通り一字一句が真実で、誤謬・矛盾は決してないものと考える。字義的解釈が明らかに不可能な際は必要に応じて「柔軟な」解釈を行うが、可能な限り例え話や抽象的な表現だとは考えない。創世記の物語もそのまま、世界の歴史そのものと捉えている。そのため、創世記の記述と直接一致しない科学、特に進化論を受け入れる余地は全くない。アメリカでは、南部を中心に公教育にこうした傾向が反映した時期があり、進化論裁判と呼ばれる一連の裁判で、創造論を学校教育にもちこむ是非が問われた。合衆国州政府では進化論を歴史教科書から削除するところも出て来ている。
  世俗的には、妊娠中絶禁止や同性愛禁止など「アメリカ的生活様式の復活」を主張し、共和党の重要な支持母体として台頭しつつある。
  この立場の教会は自ら「福音派」(Evangelicals)と自称する。但し、全ての福音派がファンダメンタリストではなく、この事に関しては福音派内部にも混同される事を嫌う批判的意見がある。

80年代後半以降、アメリカの共和党を支えているのは、原理主義的なキリスト教の右派勢力である。

◆園田義明『最新・アメリカの政治地図』(講談社現代新書) p52
  キリスト教右派の実力がはじめた発揮されたのが、1988年の共和党大統領候補予備選でのことだった。87年10月1日、後にクリスチャン・コアリションを創設することになるテレビ伝道師パット・ロバートソンが大統領選への出馬表明を行った。共和党5人、民主党7人の候補者が争った88年の大統領選は、結局当時の副大統領であったブッシュ(父)が制することになるが、保守は宗教票という「見えざる軍団」を率いて登場したロバートソンは、アイオワ州党員集会でブッシュをしのいで2位に躍り出るなど「ロバートソン旋風」を巻き起こす。ロバートソンの台頭にいち早く歓迎声明を出したのがドール候補(当時上院院内総務)である。「新しいグループが共和党に入ってくることは大いに結構」と表明した。以後、十字架に集う票が選挙戦の行方を左右するようになった。
(ネットソース)

かつてアメリカのテレビ伝道師としては、ビリー・グラハム(Billy Graham)とジミー・スワガート(Jimmy Swaggart)が有名だったが、この2人を凌いでのし上がってきたのが、パット・ロバートソン(Pat Robertson)である。1989年にクリスチャン・コアリション(Christian Coalition=キリスト教徒の連帯)を結成する。

◆ソース同上 p57
クリスチャン・コアリションは、1989年9月、元共和党大統領候補であり、テレビ伝道師で知られたパット・ロバートソンが、会員25万人を集めて設立した。発足以後、目覚しい発展を遂げ、「共和党最大の利益団体」に成長する。現在の会員数は200万人程度とされ、共鳴者も含めると共和党固定支持票の3分の1を占める勢力と言われている。

クリスチャン・コアリションなどのキリスト教保守派は、同性愛や人工中絶に反対し、伝統的な「家族の価値」を唱える。一方、「ネオコン」こと新保守主義者は、個人主義というリベラル思想は「社会不安」の温床になるとして、エリート集団が「崇高なるウソ(noble lie)」を使ってでも、国民の絆を強めるべきだとする。

両者の思惑は合致している。「崇高なるウソ」を使ってでも倒すべき相手は、かつては「悪の帝国」ソ連の共産主義であり、民主党政権時代はセックススキャンダルのビル・クリントンであり、そして90年代半ばからはイスラム教徒に矛先が向けられ始めた。

◆ソース同上 p50
  2002年11月14日、コリン・パウエル国務長官は、テレビ伝道師で知られるキリスト教指導者の発言に対して強い非難を行った。非難の相手は「クリスチャン・コアリション」の元総裁、パット・ロバートソン、バプテスト教会の牧師でありホワイトハウスのアドバイザーも務めるジェリー・ファルウェル、そしてペンテコステ派のジミー・スワガートである。
  ロバートソンは、クリスチャン・ブロードキャスティング・ネットワークのニュース番組で「イスラム教徒は、ナチスよりも質が悪い。ヒトラーも悪いが、イスラム教徒がユダヤ教徒に行いたいことはもっとひどいものだ」と発言、一方ファルウェルは、CBSの番組で「ムハンマドはテロリストだったと思う」と語る。そして、かつて売春婦を巡る不品行を認めてスキャンダルとなり聖職位を剥奪されたジミー・スワガートは、ムハンマドを「性倒錯者」「変質者」と呼びイスラム教徒の国外追放を要求する。
  これらの発言は、イスラム教徒から大きな批判の対象となったが、パウエル国務長官も「この種のイスラム教徒への憎悪は、拒絶されなくてはならない」と語る。

国際協調派のパウエルがこれを諫めようとしたが、効き目はなかった。「ムハンマドはテロリスト」であり「性倒錯者」であると罵倒する流れは、2006年には国境を越え、イスラム教徒を挑発する巨大なメディア装置ができあがったかのようだ。(参考:「天国で10人の処女が待っている」:デンマーク新聞の風刺画

パット・ロバートソンをはじめとする原理主義者は、シオニズムと大イスラエル主義に肩入れしている。聖書に「神が約束の地を与えた」と書かれているからだ。2004年にブッシュが再選を果たすと、「神のお告げ」のオンパレードである。

The Nation:Lord Knows What Robertson Wants(2004/1/7)
"I think George Bush is going to win in a walk. I really believe I'm hearing from the Lord that it's going to be a blowout election in 2004," he told his television flock, citing several days of prayer at the end of 2003. "The Lord has just blessed him. I mean, he could make terrible mistakes and comes out of it. It doesn't make any difference what he does, good or bad; God picks him up because he's a man of prayer, and God's blessing him."
【訳】「神はブッシュを祝福した。ブッシュはとんでもない間違いをするかもしれない。だが、彼が為す『善・悪』の違いなど問題ではない。神が『祈りの使徒』ブッシュを選び、その彼を今祝福しているからだ」

「神のお告げ師」ロバートソンは、2006年1月、イスラエルのシャロン首相が脳卒中で倒れたことを「ガザ地区という神の土地をパレスチナに引き渡した天罰だ」と宣言している。最近では「アメリカが悔い改めなければ、今年中にアメリカ北東部に津波が襲いかかる」と大予言まで始めている。

パット・ロバートソンの「本性」は、2005年8月23日のテレビ放送で全開となった。反米左翼のベネズエラのチャベス大統領をサッサと暗殺してしまえ、と放言したからである。



人気コメディアン・キャスターJohn Stewartの『Daily Show』もこれに噛みついた。FOXテレビの保守派コメンテーターたちも「彼の時代はもう終わった」「もう引退するべき」として切り捨て始めている。

狂信的なキリスト教原理主義者は、アメリカのネオコン共和党と「運命共同体」の道を歩み続けるのだろうか。

■■■■■■十■■■■■■  

話をユナイテッド93に戻そう。93便の英雄から電話を受けたリザ・ジェファソンは、偶然にも英雄の妻と同じ「リザ」という名前だった。偶然はこれに留まらない。

Beliefnet.com:Interview with Lisa Jefferson, the phone supervisor who took Todd Beamer's call from United Flight 93 on 9/11
  And at Verizon Airfone, when we went to call the authorities and the FBI to report this to the emergency center, the emergency operator’s name was also named Lisa.
  That’s why I said this was all planned. You know, it was just something in God’s hands that he had a plan.
【訳】Verizon Airfone社から、当局とFBIに電話を掛けたときのことです。電話を受けた緊急センターのオペレータの名前も「リザ」でした。すべてお仕組みだったのです。神の手の中で起こった何かだったのです。

シンクロニシティというは、よく起こるものである。英雄ビーマの妻と、私の名前は同じだった。警察に電話してみると、そのオペレータも私と同じ名前だった。福音主義者のリザ・ジェファソンの舞い上がりのさまが目に見えるようだ。このシンクロが彼女に『Called』という本を書かせた。ビーマからの電話は、神からの電話だったのだ。

リザ・ジェファソンは、9:45〜10:00の15分間、ビーマと話を続けた。ビーマが「Let's Roll」と言って電話を放したあとも、なぜか通話は切れなかった。その後、無音になったままの通話をなんと15分も待ち続け、社内の無線連絡で「93便が墜落した」ことを知って、呆然となったという。彼女は、英雄の妻リザに「約束の電話」を掛けなかった。

このときの通話録音は抹消されて存在しない。4日後、FBIがビーマの妻に手渡したのは、通話内容のスクリプトである。その直後に、リザ・ビーマはリザ・ジェファソンと電話で話をしている。その後2人は、一緒にテレビ番組にも出演するなど、交友も深めたようだ。

リザ・ジェファソンは夫と一緒に、ペンタゴンなどから大規模な受注を受けるVerizon Airfone社で働いている。リザ・ジェファソンは、911テロはイスラム過激派の犯行であると信じて疑わないことだろう。「悪のイスラム」に鉄拳を下すブッシュを、神の化身して崇めているのだろうか。
posted by ヒロさん at 07:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | 国際政治/謀略
この記事へのコメント
TITLE: 偽預言者に注意せよ。
>「神のお告げ師」ロバートソンは、2006年1月、イスラエルのシャロン首相が脳卒中で倒れたことを「ガザ地区という神の土地をパレスチナに引き渡した天罰だ」と宣言している。最近では「アメリカが悔い改めなければ、今年中にアメリカ北東部に津波が襲いかかる」と大予言まで始めている。

一人の切支丹としてはとても賛同できかねますな。この発言の何処にイエズス・キリストの福音があるのか?むしろ、旧約・新約聖書で繰り返し注意喚起されている偽預言者の一人でありましょうが。しかしこの一派は確かに、日本の福音派・ペンテコステ派の教会にも少なからない影響力があるのです。困ったものです。彼等の一部がやっている什一献金以上の什二献金やら、進化論否定→極端な教会学校の設立ほかで実際トラブルになっているケースがあるようで。
Posted by 枇杷 at 2006年09月11日 13:21
TITLE: ブッシュ支持率低下
先日のWSJの調査でブッシュ大統領の支持率が29%を割ったと出ていた。ウォーターゲートのニクソン依頼の低支持率とのこと。混迷するイラク情勢に米国民のなかに嫌戦ムードが蔓延しているのだろうか。しかしこれは決して大量虐殺されているイラク市民を慮ってのことではない。積み上がる米兵の殉職者数に嫌気が差しているのだと思う。良くも悪くもアメリカはおせっかいな国だ、他人の喧嘩に仲裁と称して割り込み最後は喧嘩の原因の利権を自らのコントロール下に置く。武力を持って相手を屈服させるにはそれなりに自分の中で大儀が必要になる。よくネオコン支配のブッシュ政権とキリスト教右派の関係が取り立たされるが、重要な政策決定が非常に単純な動機で進められている気がしてならない。今回の一連の虐殺についても私には旧約聖書のあるくだりが思い出されてならない。創世記のソドムとゴモラの下りだ。神の使いが邪悪な民が住むソドムとゴモラの町を業火で焼き尽くし灰燼にしてしまう。場所はきしくも現在のイラク近辺と推定されている。勧善懲悪を実行する世界の番人を自称する米政権が、自らを旧約聖書の神の使いに投影し神の雷を代理で落とす役目に陶酔していると想像すれば、空恐ろしい限りだ。
Posted by danonihachi at 2007年06月25日 10:03
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