2006年04月16日

NHK15年ぶりの大作:北朝鮮「個人崇拝への道」

海外に長くいると、日本で放映されているテレビ番組は「異次元」の世界だが、ネット上で探せば、大作が丸ごとダウンロードできる場合があるので、ありがたい。

酔夢ing Voice:「狂い咲き、NHK」(2006/4/2)
午後9時から放送された三夜連続のNHKスペシャル、「ドキュメント北朝鮮・第1集 個人崇拝への道」は久しぶりの力作だった。15年以上前まではこのレベルのドキュメンタリーが多かったが、本当に久々の力作だった。中でも旧ソ連の資料探査はNHKならではのもので、民放にはまず不可能なコンテンツなので、これなら受信料を払いたくなる。

ノムさんの時事短評 060403
  「北朝鮮特集」、みました。NHKにしては相当がんばった番組ですね。題名からして「北朝鮮」だし、キム・イルソンを呼びつけていました。朝鮮戦争は北が始めたことも明らかにしました。金日成の履歴の詐欺も伝え、写真の捏造まで検証しました。金日成が独裁体制を確立するまでの“プロパガンダ”、政敵の粛正を伝えました。
  事実としては目新しいものはありませんが、NHKが正面からこのような放送をしたことは、評価します。「主体思想」をしゅたいしそうでなく「チュチェ思想」と発音して呉れれば、更に良かった。カトリックにも、これにかぶれた人間がいっぱいいるのです。

「ノムさんの時事短評」によると、番組の構成と流れはアレキサンドル・ジェービン著『私が見た金王朝―「タス通信」平壌特派員八年間の記録』(文藝春秋 1992)に似ているという。もしかしたら、これをタネ本にして、旧ソ連関係者のインタビューに及んだのかもしれない。

NHKスペシャル『個人崇拝への道』では、パルチザン派として少数派だった金日成が、国内派、ソ連派、中国派を次々と巧みに粛清していく過程が描かれている。これに関連して、「酔夢ing Voice」ブログに寄せられたコメントは興味深い。

酔夢ing Voice:「狂い咲き、NHK」(2006/4/2)へのコメント
  問題は、どうしてあのNHKが突然こんな放送を始めたかということです。実はね、北朝鮮と同じなんですよ。NHK自体が。つまり、NHK内部左派に、NHKソビエト派、NHK中国派、そして南北朝鮮を支援するNHKパルチザン派がいる。
  NHKパルチザン派というのは主に教育テレビが活動拠点でETV特集を作ったりしてて、北朝鮮の工作員を招いて「市民による女性裁判法廷」を開いて天皇の戦争責任を追及したりしてたんだけど、まあ、NHKパルチザン派はソビエト派と中国派に比べたら弱小派閥だったわけよ。
  このNHKパルチザン派が、先日の朝日新聞との消耗戦を戦ってすっかり疲弊してしまった。そこで、勢いを取り戻したNHKソビエト派とNHK中国派が、NHKパルチザン派を粛清し始めたわけ。それがこのドキュメント北朝鮮シリーズというわけ。
  その証拠に、後ろで糸を引いていたソビエトがかわいそうな被害者みたいに思えてくるようになってたり、朝鮮戦争で韓国人を殺しまくった中国人民解放軍の義勇軍なんかがまったく出てこなかったり、前後のニュースで中国が民間交流を重視しているとかいうニュースが流れまくってるでしょ。

NHKスペシャルは、信じられないほどに北朝鮮叩きに徹しているわけだが、北朝鮮という「化け物」を育てたのは、ほかならぬソ連であり、独裁体制を加速させたのは毛沢東の文化大革命である。その辺まで裏読みしながらこのドキュメンタリーを観ると、面白さはさらにひと味違ってくるだろう。

以下の「檀君」サイトに3部作がすべて揃っているが、とりあえず『第1集 個人崇拝の道』をダウンロードすることをお奨めする。まさにNHK15年ぶりの大作である。

  • 檀君 WHO's WHO:ニュース・ドキュメンタリー番組

    番組の全ナレーションのテキスト起こしは「Blue jewel」にある。こちらも是非、ご参考に。

  • Blue jewel:NHK ドキュメント北朝鮮「個人崇拝への道」1
  • Blue jewel:NHK ドキュメント北朝鮮「個人崇拝への道」2
  • Blue jewel:NHK ドキュメント北朝鮮「個人崇拝への道」3
  • posted by ヒロさん at 08:36 | Comment(7) | TrackBack(4) | 韓国&北朝鮮
    この記事へのコメント
    TITLE: ご紹介ありがとうございました。
    ドキュメント北朝鮮、やはり秀作だと思います。
    特にソ連、アメリカ、東ドイツの直接北朝鮮との交渉にあたった人々の証言は、歴史の証人の言葉として、記録しておきたかったのです。

    多少不満も残りますが、続編も期待したいですね。

    不十分なテキストですが、少しでもお役に立てればと思います。
    どうぞ、宜しくお願いします。
    Posted by 金木犀@Blue jewel at 2006年04月16日 11:32
    TITLE: 貴重な「歴史の証言」の数々
    >金木犀@Blue jewelさん
    すばらしいテキスト起こし、感動しました。まさに「歴史の証言」の数々です。
    ことあるごとに活用していきたいと思います。

    第1集の『個人崇拝への道』には出てきませんが、金日成の本名は「金成柱」または「金聖柱」(キム・ソンジュ)です。弱冠30才の抗日活動家をいかにして「救国の星」「救国の将軍」に仕立て上げていったのか、興味津々です。
    Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2006年04月16日 21:19
    TITLE: NHKスペシャル『映像の20世紀』で泣いた
    確かに一昔前のNHKには秀作・力作・大作が有りましたね。最近のNHKは視聴率を民放と張り合い、しかも国営放送の常として堕落した二番煎じモノしか出来ないから本当に詰らないものが多い。
    「北朝鮮『個人への崇拝』」は見ていて悲しいとも何とも思えなかった。
    「共産主義の姿ってあんなモンでしょ」という気がしているからだと思う。見ていてひたすら重く、憂鬱感だけが残ってしまった。

    『映像の20世紀』、BBCだのABCだのの海外に残されたフィルムからの編集ではあるけれども、1年間掛けて放送するだけの価値のある大作でした。確かNHKのシリーズモノとしては最多再放送記録を持っていたんじゃないかな?
    始めてみたときには『それは戦争から始まった』、『大量虐殺兵器の完成』、『ヒトラーの野望』、『世界は地獄を見た』・・・・泣けて泣けてしょうがなかった。
    何年か前の年末にこれの再放送を深夜番組でやってくれたときに全てDTRに取っておいたのが今でも残っている。この頃は未だPCからDVDに取るどころか、パソコンそのものすら持っていなかったかもしれない。そして2003年の年末だったか2004年の正月だったか、何度目かの再放送を連続で流したんだけれども・・・馬鹿みたいに『平和船』と称するアホ船旅に出てしまい、PC⇒DVDに録画予約しておいたら、家族が「PCが勝手に動いている」と電源ごとPCを切ってしまった。
    今NHKに望むことといったら、詰らないドラマやバラエティー番組作るよりも、このような秀作の再放送でもやってもらったほうが余程面白く、また予算の削減にもつながると思う。

    英国に居た頃、『モンティ・パイソン』の続編(?)、News of 9 o'clock をパロッた『Not of News 9 o'clock(もしかしたらNot the News of 9 o'clock)』と言うのをやっていて、これはバラエティーの質の良さと言うか、英国ジョークをよく教えてくれた。更にその続編がかの『Mr. Bean』なのだけれど、これは日本でも放送されたけれど、『Not of〜〜』を何処か民放でも流してくれないかなぁ・・・・もっとも時事ネタだったから今見てもちっとも面白く無いかもしれないが。
    Posted by ちゃねらー at 2006年04月16日 23:23
    TITLE: 「映像の世紀」は15,000円が妥当
    NHK DVD-BOX 「映像の世紀」全11集 78,000円
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005HRT8/503-5152373-7954317
    NHK DVD 映像の世紀 SPECIAL BOX 81,900円
    http://www.nhk-ep.com/view/10041.html

    どういう値段設定をしてるんでしょうね。15,000円ぐらいなら買ってやってもいいぞ、NHK。

    イギリスにいてもシェークスピア専門の「グローブ座」などになかなか行く機会がないので、先日、ついに大枚をはたいて、BBCシェークスピア全集をBOXで買った。各作品は2〜4時間で、37枚組み。お値段は約5万円。高いことは高いが、全作品37枚なので、私としては納得の値段である。
    Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2006年04月17日 00:21
    TITLE: 今日のチェルノブイリから20年も良かった
    某所ではありがとうございます。
    NHKスペシャルですが、今日のチェルノブイリから20年も良かったです。
    ベラルーシやウクライナで苦しんでいる人が多いのにIAEAはそれを認めよう
    としないのだ。というイデオロギー抜きで無口な告発でした。
    Posted by Kawai Oyaji at 2006年04月17日 01:06
    TITLE: それでもNHKの受信料は払いません
    NHKのDVDがバカ高いのは主に学校関係(含各種図書館)に買ってもらうことしか
    考えていないからでしょう。研究費で買う奴もいるかもしれません。プロジェクトXの
    DVDも、ヴィスコンティ『山猫』並の高さ。4月に入ったら、やけにNHKの集金人が
    うるさいです。毎週末(酷いときは土日続けて)来てます。もちろん黙殺ですが。
    Posted by wnm at 2006年04月17日 09:41
    TITLE: 『映像の世紀』Σ( ̄□ ̄;;;)!! エッ!
    ハハハ・・・・しっかりVTRのラベルに『映像の20世紀』と印刷していた
    ( ̄ー ̄∂) ポリポリ

    DVD売っているのは知っていましたが、余りの高さに手を出す気になりませんでした。
    あの値段で個人で購入する人、ホントいないでしょうね。
    wnmさんの云うとおりです。

    いずれamazon.comかなにかで安く中古が売られるんじゃないでしょうか。
    ¥15000.-新品ならば妥当な線かな?でもしっかりVTR持っていますからね・・・
    ((( ̄( ̄( ̄( ̄ー ̄) ̄) ̄) ̄)))フッ
    Posted by ちゃねらー at 2006年04月18日 20:48
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    NHKスペシャル ドキュメント北朝鮮第一集「個人崇拝への道」(1)
    Excerpt: NHKスペシャル 『ドキュメント北朝鮮第一集』を文字化してみました。 貴重な証言だけでもテキストに残しておきたかったので、よかったら、みなさんも参考にしてください。 ――――――――――――――――..
    Weblog: Blue jewel
    Tracked: 2006-04-16 11:27

    不用意に関わってはいけない国
    Excerpt: NHKの北朝鮮特集については4月6日のエントリでふれたが、ヒロさん日記経由で、ようやく酔夢ing Voiceの4月2日エントリに気づいた。ここに例の述懐がテキスト化されていた。 <引用開始> 番組の最..
    Weblog: worldNote
    Tracked: 2006-04-16 14:58

    ドキュメント北朝鮮
    Excerpt: 『NHKスペシャル ドキュメント北朝鮮』 4月2日(日)からの3夜連続放送でした。 資料や証言を元に上手く構成されていて良かったです。 録画してなかったけど、再放送があるのなら録画しておきたいです。 ..
    Weblog: んなアホな!
    Tracked: 2006-04-17 10:40

    『ドキュメント北朝鮮』(NHK4/2放映)〜B千里馬運動と独裁の強化…そして瀬戸際外交のはじまり
    Excerpt: さて、中断していたが、『ドキュメント北朝鮮』(NHK4/2放映)〜Bチョンリマ(千里馬)運動と独裁の強化…そして瀬戸際外交のはじまり と題して続きをエントリーする。 ===============..
    Weblog: 路上日記@なんで屋
    Tracked: 2006-10-24 02:56
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