2006年04月02日

イエスのサカナ:水瓶座の時代を泳ぐ「ウェシカ・ピスキス」

エイプリルフールで騙される人のことを、フランスでは「poisson d'avril(4月の魚)」という。人の背中に魚の形をした紙切れや布をぶら下げて、悪ふざけをする。いいカモ、じゃなくて、いいサカナにされてしまうのだ。

魚ごっこなら、まだいい。インドでは3月31日にホーリー(Holi)というお祭りがあるが、チョットやソットで落ちない、赤・青・黄色などの粉やペンキをかけられるので、まともな服を着て外へは行けない。いたずらな子供は、ビルの屋上からから道行く人にペンキ爆弾をお見舞いする。その凄まじさを知らない人はこちらをごらんあれ。

一見、別々に思えるフランスとインドのイベントだが、どちらも「春分」にちなむ、春の女神の祭典なのだろう。「4月の魚」は、キリストの「復活祭」や12宮の「うお座」とも関係があるにちがいない。

以前、「十字架がキリスト教の象徴になったのは4世紀以降」という話を書いたが、ローマから公認されるまでのキリスト教は、地下組織の「秘密結社」であり、そのシンボルマークは「サカナ」であった。

キリスト教会のお偉い人たちは、 ギリシャ語で魚を意味する「ΙΧΘΥΣ」とは、すなわち「Ι=イエス」「Χ=キリスト」「ΘΥ=神の子」「Σ=救い主」を表す頭字語(acronym)である、という後光が射すような説明をしているが、そんないかがわしい話(fishy story)に騙されてはいけない。

中世の賛美歌では、マリアを「魚の母」にたとえ、イエスのことを「マリアの泉の小さな魚」あるいは「マリアが泉で捕まえた小さな魚」と歌っていた例があるという。

The Sacred Circle:Starlight Events (by Lorena Loo)
As Christianity’s Great Mother Goddess, Mary was sometimes referred to as the “fish mother” whose son, Jesus, was celebrated in a medieval hymn as “the little fish the Virgin caught in the fountain.”

魚のマークを90度回転して縦向きにするとアーモンド型になるが、イタリア語でアーモンドのことを「マンドルラ(Mandorla)」と呼ぶ。キリスト教の美術史では「マンドルラ=中世絵画の光背形式」となって、これまた後光が射しているが、もともとは女性の下半身にある「観音さま」のことである。



左端の写真はシーラ・ナ・ギグ(Sheila-na-gig)と呼ばれるケルトの豊饒の女神だが、勘違いなキリスト教徒が「悪魔」として破壊してしまったものである。これと同じモチーフは、インドのカーリー女神にも見られる。

「サカナ」と「アーモンド」は、古くから女陰を示すシンボルマークだが、必ずしも「女性原理」というわけではない。「サカナ」のほうは、女陰がしばしば海産物に例えられるように「サカナ臭い」(失礼な!)ものなのであろうし、一方、「アーモンド」といえば、植物的な香りのする「種」であり、「男根」「睾丸」を連想させる。

縦置きのアーモンドをじーっと見つめていると、女陰にも見えれば、男根にも見えてくる。このマークは「両性具有」のシンボルでもあるのだ。

キリスト以前のローマやギリシアでは、「サカナ=アーモンド」は「豊饒・多産」のシンボルであった。1〜3世紀のキリスト教徒たちは、どのような背景でこのシンボルを採用したのだろうか?

占星術や神秘学は、こんな風に説明する。イエスが生まれたころに「おひつじ座」の時代が終わり、「うお座」の時代が始まったのだ、と。星座の話は面倒なので、基礎知識を整理してみることにする。

1) まず、占星術は「太陽占い」なので、夜に「見える星座」とは関係がない。4月1日生まれの人は「おひつじ座」だが、夜に目を凝らしても、おひつじ座は見えない。
2) 次に、星占いの星座が「ふたご座:5月22日〜6月21日」のようなハンパな日付になっているのは、春分を起点にして、12の星座名を「均等振りわけ」した結果である。
3) 4月前半に生まれている人は「おひつじ座」だが、昼に太陽を見上げて、その裏側を「霊視」できたとしても、「おひつじ座」は見えない。見えるのは「うお座」である。
4) その理由は、26000年周期の歳差運動によって、季節ごとに見える「星座位置」が少しづつずれていくこと、さらに12の星座が30度間隔できれいに並んでいないから、である。

西洋占星術では、トップバッターは「おひつじ座」で、以下「おうし座、ふたご座・・・・」のように続いて、フィナーレが「うお座」である。占星術が成立したころ、「春分の日」の星座は「おひつじ座」だったからだ。しかし、時をへて、少しずつ星座がずれてゆき、初期キリスト教徒が「地下組織」で頑張っているころには、「春分の日」の星座は「うお座」になり始めていた。

ニューエイジ運動の意味、およびまとめ
  西洋占星術によると、黄道12宮のうち春分点の星座は、キリストが生誕した時には魚座のあたりであったが、地軸の歳差運動によって2千年周期で隣の星座にうつるため、今や水瓶座の時代に入ろうとしているという。1960年代は水瓶座の時代の始まりだったのだ、ともされる。キリストや2千年紀(また、その世紀末)という考え方はキリスト教、あるいはその起源のユダヤ教の終末論をも想起させるが、ローザックやファーガソンのニューエイジ文化論はそれとは対照的に、楽観主義で明るい。

  こうした魚座の時代から水瓶座の時代(ニューエイジ)へ、という発想は、ミュージカル『ヘアー』の1960年代以来対抗文化の中で徐々に市民権を得た訳だが、必ずしもそれがオリジナルではないともいう。一説には、1875年にニューヨークに「神智学協会」を創設したロシア生まれのマダム・ブラヴァツキー(1831〜91)の思想を起源とするともいう。彼女の神智学は、人類の7つの周期にもとづく進化の過程で現在は5番目の段階に当たり、それ以前にはレムリアやアトランティスなどの先史文明があり、現在の5段階目の人類も7つの亜人類に分れ、今はその5番目の段階にあるというものらしい。

  しかし、ブラヴァツキーやその影響を受けたグルジェフ、ウスペンスキーらロシア由来の神秘主義が華々しく復活したのは、やはり1960年代以降の対抗文化の中であった。グルジェフらの影響を受けたと云うロック・ミュージシャン(R・フリップら)が登場したり、日本の「精神世界」系(この用語は、1977年頃新宿の某書店が、書棚の区分に使用したのが始まりとされる)の出版社から出た出版物でブラヴァツキーの著作『アイシス・アンヴェイルド』や『シークレット・ドクトリン』、また神智学の系列を引くドイツの教育学者シュタイナーの『アーカシア年代記』などの紹介が、1970年代以降にされるようになったからである。

で、現在は「みずがめ座」の時代に入ったといって大騒ぎしている人たちがいるが、「春分の日」に太陽の裏側を「霊視」しても、まだまだ「みずがめ座」は見えない。実際に「霊視」できるのは、300年ほど先の話である。

「ニューエイジ」から「うお座」の話に戻そう。天空にある「うお座」はサカナやアーモンドの形はしていないので、まずは形をご確認願いたい。

ギリシア神話によると、美の女神「アフロディテ」とその子「エロス」がエリダヌス川(=エリダヌス座)のそばを歩いていた。そこに、怪物「テュポン」が現れ、驚いた2人は「魚の形」になって逃げた。2人は離ればなれにならないように、ひもをつけて逃げた、というお話である。

2人は天上界で「サカナ」のお星様となったわけで、「母と息子」は晴れてあの世で結ばれたことになる。このアフロディテが祀られている神殿には、聖母マリアも祀られており、「アフロディテ」と「聖母マリア」は同一の女神と見なされている。(ついでに春の女神の「ヴィーナス」も)

ということでイエスも「サカナ」となるわけで、このサカナは「男性」と「女性」の両方を合わせもつ「両性具有」である。この「サカナ」は、2つの円の「交差部」にも見て取ることができる。陰陽太一である。

2つの円が交わる図象を「ウェシカ・ピスキス(Vesica Piscis)」という。これはラテン語読みだが、英語では「ヴェシカ・パイシーズ」という。「魚の器(うつわ)」という意味である。この2つの円のことを「マンドルラ」と呼ぶ人もいる。見たことのある方、いらっしゃいますか?

posted by ヒロさん at 07:31 | Comment(13) | TrackBack(0) | 神話・宗教・民俗学
この記事へのコメント
TITLE: 占星術
「ズルワーン教の神話」東條 真人
http://home2.highway.ne.jp/miiboat/HP_Mithraism_Myth_Zurwaniyya.html
『〔占星術の根本神話〕 占星術は、バビロニアで発達したが、バビロニアの宗教は、体系的な占星術神話を発達させる前にアケメネス朝ペルシアに征服された。そのため、バビロニア神話をいくらひもといても、占星術神話は見つからない。本格的な占星術神話が誕生したのは、アケメネス朝治下であり、それはカルデアン・マギの手によってなされ、ズルワーン教の神話というかたちをとった。ズルワーン教の神話は、西方ミトラ教、東方ミトラ教、ヤズダン教という順序で継承され、最終的に神聖数七にもとづく教義体系に発展した。』
反ギリシャ神話「月経暦/太陰暦(Menstrual Calendar)」
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/menscalendar.html
『古代のヘブライ人は暦をカルデアから受け継いだ。カルデアはアブラハムの伝説上の故郷であり、アプラハムの名は古くはアプ-シンで、「月の父」を意味した[註6]。カルデア人は占星術を発明したと信じられている。現在の占星術は主として太陽の動きをもとにしているが、カルデア人は太陽を観察したのではなかった。彼らは「月の崇拝者」で、黄道帯にある異なる「宿」を通る月の動きによって、人間の運命は決定される、と信じていた。』
Posted by えの at 2006年04月02日 11:56
TITLE: グレた景教
高野山霊宝館 胎蔵曼荼羅
http://www.reihokan.or.jp/syuzohin/hotoke/mandara/12gu.html
『十二宮は太陽の運行経路である黄道を12の星座で分けたもので、その成立は古くチグリス・ユーフラテス両河流域に発展したカルデア文化(紀元前六〜七世紀)にまでさかのぼります。
自らの生まれ月を12の星座に配し、その宮が人生の禍福をつかさどる・・・という説明も不要なほど西洋占星術・星占いは身近なものとなっていますが、この十二宮は東西に伝幡し、インドから中国を経て密教に取り入れられていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。』
Posted by えの at 2006年04月02日 12:14
TITLE: 暦の始まり
横浜こども科学館 天文民俗学のページ お正月の始まり
http://astro.ysc.go.jp/izumo/shogatu.html
『紀元前18世紀ごろの古代バビロニア王国では、1年は春分の日(3/21頃) 近くの新月の日で始まった。春分の日はおひつじ座のある星が太陽と同時にのぼるのを観測して調べたとされる。』
Posted by えの at 2006年04月02日 13:21
TITLE: なぜ「サカナ」がキリスト教のシンボルだったか
キリスト教徒はなぜ「サカナ」をシンボルとして使ったのか、は今ひとつわかりません。

1)「人を漁る漁師にしよう」というペテロを弟子にした話、パンとサカナの奇跡など
2)ギリシャ語で「サカナ」が「イエス、キリスト、神の子、救世主」の頭文字になること
3)春分点の星座が「うお座」
4)サカナマークは「産道」のイメージで、「豊饒」と「両性具有」のシンボルでもある
5)「マリア=イエス」の関係が、ギリシャ神話の「アフロディテ=エロス」、エジプト神話の「イシス=ホルス」と対比ができ、サカナやファロス(男根)が登場すること
などがあります。

1)は福音書の記述から「信者獲得=サカナ獲得」という、もっとも素直に受け入れられそうな話。2)は「権威」によるあとづけ解釈っぽい。3)はニューエージの人たちが言い出して、古くはブラバツキーの神智学ですが、2000年前のキリスト教徒が果たして「うお座」に注目していたことはありえるか。4)5)はすでに浸透している「サカナ」のシンボルや神話を、宗教的な理由で結びつけることはありえるのか、ということ。

決定打ではありませんが、サカナのマークを「去勢のマーク」として考察している人もいます。「去勢」→「ファロス」→「ギリシャ神話との類型」を援護する話です。

「キリスト教による去勢」
http://www.nagaitosiya.com/b/christianity.html
『(サカナのマークに関して)キリスト教会は、これには女性性器の意味はないと主張しているが、キリスト教のシンボルが、建前の説明とは別に、絵文字的には、去勢した跡を意味する女陰の記号であったことは興味深い。』
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2006年04月02日 20:42
TITLE: 賢瓶宮の時代
「アクエリアスの時代」宗教団体アーレフ マイトレーヤ正大師(上祐史浩)
http://www.aleph.to/newcentury/001.html
Posted by えの at 2006年04月02日 22:59
TITLE: 双魚宮
イエスの本当の誕生日からという説
http://www.pcs.ne.jp/~yu/twi/qumran/qumran.html
Posted by えの at 2006年04月03日 01:07
TITLE: プラトン年
最初に読むミトラ神話
http://home2.highway.ne.jp/miiboat/HP_Mithraic_Myths.html
『〔春分点と周期〕 春分点は、歳差運動により移動する。一星座を通過するのに2160年かかる。これを1プラトン月という。十二星座を一周するには、25920年かかる。これを1プラトン年という。春分点が移動していることを発見したのは、ギリシアのヒッパルコスHipparchus, 190-126 B. C.である。』
天文民俗学のページ 古代オリエントの星
http://astro.ysc.go.jp/izumo/orient.html
『欧米では、「ギリシャの天文学(と数学の一部?)は、オリジナルではなく、多くの部分がカルデアから伝わったものである」という話を、知らない人が多いそうである。(中略)初期ギリシャで、宇宙論以外でカルデアの数理天文学を凌駕したのは、歳差を発見したヒッパルコス(B.C.190-?)ただ1人であろうというのが、最近の一般的な解釈であるようだ。』
Posted by えの at 2006年04月04日 09:43
TITLE: ついでに春の女神の「ヴィーナス」も?
ついでに春の女神の「ヴィーナス」もとありますが「ヴィーナス」と「アフロディテ」は同一の女神であり、ギリシャでの呼び名とローマでの呼び名の違いのはずでは?
Posted by 星 良兼 at 2006年04月04日 17:36
TITLE: ヴィーナス=アフロディテ?
「大日如来=アマテラス」という結びつけ(本地垂迹)があるように、「アフロディテ=アルテミス=ヴィーナス」という類似形があるということ。発祥の由来は違うと思いますよ。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/venus.html
『アドリア海沿岸のヴェネチ諸部族の母であり名祖である太女神に由来する女神で、その性的側面を強調したローマ名である。ベネチアの町の名もこの母親にちなんでいる。veneration(「崇敬」)やvenery(「性交」「好色」)もその派生語である。veneryはかつて狩猟を意味していた。というのは、東方のヴィーナスである アルテミスと同じく、彼女はかつては「動物たちの女主人」であったからである。彼女の有角神(狩人であり犠牲の雄鹿でもある アドニス)はvenison(「ヴィーナスの息子」)となった [註1]。』
Posted by Hiro-san★ブログ主 at 2006年04月04日 19:28
TITLE: 永遠の妹であるアルテミス
大地母神系でもアルテミス=ディアナは妹属性です。
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=127349&log=20050505
『賢治にとっての「大地」は、愛憐や愛着でいったんそれに包み込ま
 れると、身動きがつかなくなってしまう、母親的なものとは、ちょっ
 と違うものだ、と思います。それは、むしろ妹的なものではないので
 しょうか。(中略)僕たちはむし
 ろ、地球をガイアではなく、永遠の妹であるアルテミスとしてとらえ
 て、宮沢賢治がおこなったように、大地を過ぎ越していくものとして、
 新しく思考しなおしていく必要があるのではないでしょうか。』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/487728625X
Posted by えの at 2006年04月05日 01:19
TITLE: グノーシス派の福音書
古代の文書『ユダの福音書』の鑑定と翻訳
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20060407_2.shtml
『『ユダの福音書』の冒頭には、こう書かれています。「過越(すぎこし)の祭りが始まる3日前、イスカリオテのユダとの1週間の対話でイエスが語った秘密の啓示」。福音書の初めの部分で、イエスは「お前たちの神」に祈りを捧げる弟子たちを笑います。この神とは、世界を創造した旧約聖書の劣った神のことです。そしてイエスは、この私を直視し、真の姿を理解せよと迫りましたが、弟子たちは目を向けようとしません。
 最も重要なくだりは、イエスがユダにこう語る部分です。「お前は、真の私を包むこの肉体を犠牲とし、すべての弟子たちを超える存在になるだろう」。つまり、ユダはイエスから物質である肉体を取り除くことによって、内なる真の自己、つまり神の本質を解放するというのです。』

「トマスによる福音書」「マグダラのマリアの福音書」
マグダラのマリア
http://www.geocities.jp/johannes_schiffberg/Maria_Magdalena.html
『要はペテロを中心とする後のローマ・カトリックと、マグダラのマリアを信仰する派とが原始キリスト教団の中に存在していて、神秘思想的立場であるグノーシス主義的キリスト教では、同じく神秘的傾向を持ったマグダラのマリアを教祖としていたように私には思える。』
反ギリシャ神話「マグダラのマリア(Mary Magdalene) 」
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/mary_magdalene.html
Posted by えの at 2006年04月08日 01:57
TITLE: マリアたち
女性崇拝とヨーロッパ文化
http://mitleid.cool.ne.jp/female.htm
原始キリスト教の発見
http://www.hm3.aitai.ne.jp/~makokato/gnosis.htm
反ギリシャ神話「聖母マリア(Mary)」
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/mary.html
Posted by えの at 2006年04月10日 00:53
TITLE: 四月の魚 〜POISSON D'AVRIL〜
http://www3.cnet-ta.ne.jp/c/cocone/cocone/sakana02.html
Posted by えの at 2006年04月11日 10:24
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