この大碩学が論壇界にデビューしたのは、何といっても『知的生活の方法』(講談社現代新書)であろう。私が渡部昇一の著作に引き込まれたのは、1冊目が高校生のときに兄の本棚からかすめ取った『日本史からみた日本人』(産業能率短大出版)で、2冊目が大学生のときに読んだ『知的生活の方法』である。
少しこざかしくなった大学生の私であったが、とても消化できるようなシロモノではなかった。「書庫つきの家を持つ」だとか、「まずクーラーに投資するべきだ」とか、「カントのように朝5時に起床すべし」とか、私にとってはトンでもない話ばかりだったのである。加えて、少々男尊女卑的な記述がいくつかあって、古いお堅い人だな〜という印象をもっていた。
しかしながら、私も生真面目な性格であったので、この本から影響も受けている。カントが毎日2本のワインを飲んでいたと知って、事あるごとに(無理をして)ワインを飲むようになったり、身銭を切って本を買えということで、日本橋の丸善で洋書を買い漁る日々が続いたりしたものだ。
買ってはみたものの、頑張って「勉強」しただけで、ツンドク同然になった洋書は100〜150冊に及んだ。アガサ・クリスティのシリーズはかなり入れ込んで、『Mirror cracks from side to side』とか、映画にもなった『Death on the Nile(ナイル殺人事件)』はおぼろげながら、今も覚えている。TVドラマの『刑事コロンボ』シリーズも涙ぐましい努力で読み続けた。
日本の英語教育界の「神様」といえば、その昔、NHKラジオ講座を担当した松本亨(まつもと・とおる)で、彼の本はほとんど全部買っていた。松本亨は「英語がうまくなりたければ、英語で考えろ」という無茶を言っていた人で、彼が若いころパール・バック(Pearl Buck)に入れ込んでいたので、私も『Good Earth(大地)』を最後まで読み通した。
◆『知的生活の方法』(講談社現代新書) p35
当時の私は、有名人や大御所が「読むべきだ」という本をただただ真面目に読み続けていた。パール・バックの『Good Earth』もそうだし、洋書の棚でただ目立っていたというだけの理由で買って読み続けた『赤毛のアン』シリーズも、別段取りたてて面白いわけではなかった。大学のつまらないテキストに加えて、なけなしのお金をはたいて、ワクワクしない本ばかり「勉強」と称して読み続けていたことになる。
では、英語の本で夢中になって読んだ本が1冊もないのか、というとそうでもない。せめてもの救いなのだが、2冊だけある。1冊は『Good Earth』の延長で手にしたパール・バックの『Letter from Peking』。もう1冊はメアリ・ヒギンズ・クラーク(Mary Higgins Clark)の『Cry in the Night』というサイコ・ミステリーだ。
この2冊は、読み始めて、一気に最後まで読破した数少ない本である。『Cry in the Night』はやさしい文体で、グングンと引き込まれ、炎天猛暑の日に、冷房の効いた近所の喫茶店に8時間粘って読み通した。同じ本をイギリスに来てから買い直して読んでみたのだが、けっして「やさしい文体」とは思えず、難しい単語もたくさんあった。しかし25年前は「やさしい」と感じられたのである。不思議である。
『Letter from Peking』は、中国人と結婚したアメリカ人女性の物語で、動乱の中国から逃れるため、子供を連れてひと足先にアメリカに移住し、夫からの手紙を待ち続けるという、幻想的なほどに美しい物語である。この小説は絶版になっていたので諦めていたのだが、最近アマゾンの中古市場に目覚めた私は、つい数時間前に1ポンド(郵送代を入れると3.5ポンド=700円)で注文を終えたところである。
◆『知的生活の方法』(講談社現代新書) p67
あなたは繰りかえして読む本を何冊ぐらい持っているだろうか。それはどんな本だろうか。それがわかれば、あなたがどんな人かよくわかる。しかしあなたの古典がないならば、あなたはいくら本を広く、多く読んでも私は読書家とは考えたくない。まず、2、3年前に読んでおもしろかったと思うものを片っぱしから読みなおしてみられるとよい。
「あなたの古典」とは、あなたが繰り返し読む本のことだ。情報化社会といわれるようになってから、本も映画も音楽も、次から次へと登場して消費されていく。「ほんとうにおもしろい」と感じた本が手許になく、あったとしても「一過性の快感」であったかのように本棚で眠っているのは、とても淋しいことだ。
渡部昇一氏は、小中高で秀才であったわけではない。しかし本を読む「ゾクゾクする感覚」を大事にし、「ゾクゾクするほどわからなければ、わかったとはいえない」という正直な自分を大切にしてきた方なのだ、と私なりに思う。
◆『知的生活の方法』(講談社現代新書) p72
「読んでよかったなあ」とほんとうに自分が思った本を自分の周囲に置くこと、そして時々、それを取り出してパラパラ読みかえすことなのである。その修練ができておれば、書店で立ち読みしただけで、ピーンと来るようになる。
遅きに失しながらも、私も「知的生活」を始めてみようと決意をした2006年の元旦である。渡部氏の『知的生活の方法』の登場は1976年だが、21世紀の『知的生活の方法』からは、インターネットというツールをはずすことはできないだろう。今年も「ゾクゾクする」ようなブログ、「RSSしてよかったなあ」というブログに巡り会いたいものです。
新年明けましておめでとうございます。
私が最初に読んだ渡部先生の本は「歴史の読み方」(祥伝社ノンブックス)で高校生の頃だったと思います。一通り日本の歴史事項を知った上で「改革」と「腐敗」が逆説的に扱われるのを見てクラクラした事を未だに覚えています。次が「知的生活の方法」かな。どちらも自腹ではなくオヤジの棚から抜きました。
元々オヤジがフジの「竹村健一の世相を斬る」やTBSの「時事放談」をいつも見ているのに小学生の頃からつきあわされていたので、渡部先生自体は昔からのおなじみさんでした。
「身銭を切って〜」や「自分の図書館を作る」という点はこの本に負うところが多いですね。あと、文庫本は年を取ってからキツイ、というのでハードカバーを(安いから、ということもありますが)買うようにしています。置き場所が最大の難点です。渡部デザインの一戸建ては一生の夢ですね。
それでは、本年もよろしくお願い致します。
あけましておめでとうございます。
そして、はじめまして。北祭と申します。どうぞよろしくおねがいします。
元旦にふさわしくもすばらしい文章を目にすることができました。ありがとうございます。
ぼくも身銭を切って本を買う姿勢の大切さを渡部昇一氏から学びました。
いま、渡部昇一氏と同じ時代に生を享けたことに感謝しています。
新年。御サイトに集う皆様方のご健勝とご多幸をお祈りいたします。
元日や一系の天子不二の山 鳴雪
『知的生活』の登場した1976年、私は西武線、山手線そして中央線を適当に乗り継ぎながら、水道橋に会場の一つがあった進学塾に週1回日曜日に通っていました。その頃の愛読書は恥ずかしながら、受験参考書『自由自在』、『予習シリーズ』そして『日本のすがた』でした。一番最後の小冊子には、社会の入試問題の出題材料になる統計、たとえば、鉄鉱石の産出国、造船生産高、鉄鋼生産高、第1次産業〜第3次産業の就業者人口、電力源(例:火力発電、水力発電)、等々のランキングが掲載されており、受験生必携本で、当時は造船、鉄鋼生産高などで日本がトップかそれに次ぐ上位にランクされていました。いまどきの小学生は全然違う統計を頭に入れているのでしょう。末筆ながら、本年も宜しくお願いします。
Hiroさん,
謹賀新年、明けましておめでとうございます。
最近、日本の若い人達の間ではアケオメって言うらしいですね。
ニューヨークは昨夜のニューイヤーズ・イブの喧騒から一夜明けて今日は人っ子一人いない静けさです。
昨年はHiroさんからいろいろとプライベートな面でも励まされ、ありがとうございました。
Hiroさんの今年も素晴らしい年になるように願っております。
と言う事で今年もまた宜しくお願いします。
新年のお慶びを申し上げます。ヒロさん、さっそくのTB、コメントをありがとうございました。
海の向こうにお住まいのヒロさんとお知り合いになれたのも、渡部昇一氏がご縁。ブログのチカラを改めて実感するとともに、お知り合いになれてとてもうれしく思っています。
ヒロさんの情報もこれまたすばらしいですね。私も負けずに頑張らなくっちゃ。なにも変わったことをするつもりはありませんが、夢をもって、ただひたすらまっしぐらに突進していきたいと思っています。
末尾になりますが、ヒロさんのご健勝となおいっそうのご繁栄をお祈りいたしまして、新年のごあいさつといたします。どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
明けましておめでとうございます。
当ブログの『お薦めBLOG』に登録させていただきました。
今後とも、よろしくお願いします。
渡部 昇一先生の著作をいろいろと読み進めています。
殆どは、共感し支持しておりますが、先の<太平洋戦争が侵略戦争ではなかった>という
のだけは、賛成できません。 もしあれが侵略戦争ではなかったとすれば、全世界で歴史上侵略戦争というのは、あったのでしょうか。中曽根元首相が言っている様に、自衛戦争
と侵略戦争の性格を含んでいたというのが reasonable と思っております。
この1点を除けば、<不平等主義のすすめ>など全く同感です。
益々のご健筆とご自愛を願っております。
最近ブログをはじめ、ここを発見したので、いろいろな記事を読み、勉強させてもらっています。 渡部昇一氏について、何も知らなかったのですが、類似本が多くある中で最も自分にフィットしそうと購入したのが、「自分を動かせ」 渡部昇一編著、サミュエル・スマイルズ原著であり、自分のテンションを上げながら、すらすらと読むことができました。 渡部氏もこのブログも今後とも参考にさせていただく所存です。
はじめまして、こんにちは。
記事内容がとても興味深かったので、
「知的生活なブログ」として
掲載させて頂きましたm(__)m