一方、近所の町立図書館が充実していたので、こちらは主に馴染みの薄かった児童文学を大量に借りて読むことにした。子供への読み聞かせのためにも、有名どころを一通りよんでみようということになり、岩波少年文庫シリーズにかなりお世話になった。
パソコンに保存した読書記録から拾い上げてみると、『アーサー王物語』、『家なき子』、『エリコの丘から』、『思い出のマーニー』、『クリスマス・キャロル』、『クローディアの秘密』、『宝島』、『時の旅人』、『トムは真夜中の庭で』、『長靴下のピッピ』、『800番への旅』、『秘密の花園』、『不思議の国アリス』、『ふたりのロッテ』などだ。
数十年ぶりに読む懐かしいものもあれば、まったく初めての作品もある。私の個人的なお薦めは『思い出のマーニー』(原題:When Marnie was there)。子供のときに岩波少年文庫をほぼ全部読んだという配偶者からのお薦めは『ぽっぺん先生の日曜日』と『クローディアの秘密』である。
その他、シリーズの一覧を眺めてみたい方には、「20代のうちに岩波少年文庫を全部読破しよう」という方のサイトがいいかもしれない。一覧表は、こちらからどうぞ→岩波少年文庫全作品読破に挑戦!
イギリスに来てからも子供用に十数冊を取り寄せたが、ちょっとしたキッカケで『ドリトル先生』シリーズを私も読むことになった。この本は冒険もの、動物ものとして面白いが、小学1〜2年生にふさわしいかどうかでは、反対意見もある。斜に構えた皮肉な表現が多いこと、名訳ながら井伏鱒二訳が(現代の感覚で)少々固いこと、そして「人種差別表現」があること。
「ドリトル先生物語」について考える(2002/2/5)
朝日新聞2/4朝刊(=2002年2月4日)に「『ドリトル先生』回収論争 井伏鱒二氏訳に『差別表現』」。要するに井伏鱒二訳に差別的表現が多く、最新文庫版を回収せよ、ということらしい。そもそもヒュー・ロフティングの原書そのものにも現代の基準と判断で考えれば問題があるということは再三欧米でも言われていて、最近のハリウッドではエディ・マーフィがドリトル先生を演じてヒット作になっている(さすがにイメージが狂った)。岩波少年文庫新版『ドリトル先生アフリカゆき』(ISBN4-00-114021-7)p.187〜にある石井桃子氏「『ドリトル先生物語』について」によれば、黒人問題を大きな苦しみとしてアメリカでは、「ドリトル先生物語」は、公共図書館の公開の書棚にだしておくところは、ほとんどなくなったようだとのことであるし、アメリカの版元は『アフリカゆき』と『航海記』の二冊しか出版していない、イギリスでは全巻そろっていまも出版されている、と書いておられる(この一文は1978年3月付けなので現在はまた状況が変わっているかもしれない)。
具体的にどこが差別的だというのだろうか。井伏鱒二訳の『ドリトル先生 アフリカゆき』(原題:The Story of Dr. Dolittle)から探してみた。
確かにかなり露骨である。アフリカの王国を通過したドリトル先生一向は牢屋に入れられるが、その王子が「白人になりたい」という願望を持っていて、ドリトル先生がある薬を使って、一時的に顔を白くしてあげる、という話だ。この作品が書かれたのは1920年のことだが、アメリカでは70年代以降、確かに発禁となっている。
Epinion.com:The Story Of Doctor Dolittle(2003/1/15)
Though Martin Luther King, Jr. Day is celebrated Monday, we can start celebrating with this revision of 1920's children's book, The Story of Dr. Dolittle, banned in the United States since the 70s for a subplot involving an African prince wishing to be a white man. It seems very appropriate after being slightly revised in 1997 by Patricia and Fredrick McKissack. The prince now hopes to become a brave lion and Dr. Dolittle gives him hair tonic that shags out his hair, but refuses to let him keep the hand mirror because the shag effect will be temporary and he comments to his pets that he hopes the prince learns that he doesn't need to look like a lion to be brave or more worthy of attention.
【訳】マーチン・ルサー・キング生誕記念日(=1月19日)を控えて、1920年の児童書『ドリトル先生 アフリカゆき』のリメイク版ができたことを喜びたい。この本は、アフリカの王子が白人願望を抱いているというくだりが原因で70年代からアメリカで発禁となっている。1997年にPatricia and Fredrick McKissackらが手直しを行い、非常に適切な内容となっている。新版では、王子は「勇敢なライオン」になりたいと欲し、ドリトル先生が髪をボサボサにするヘアトニックを与える。しかし、このボサボサ効果が一時的であるがゆえに、王子には手鏡を使わせない。「勇敢になり、注目浴びるためには、何もライオンを真似る必要はないのだ」ということをわかってくれたらな〜、とドリトル先生はペットたちに話す。
【訳】マーチン・ルサー・キング生誕記念日(=1月19日)を控えて、1920年の児童書『ドリトル先生 アフリカゆき』のリメイク版ができたことを喜びたい。この本は、アフリカの王子が白人願望を抱いているというくだりが原因で70年代からアメリカで発禁となっている。1997年にPatricia and Fredrick McKissackらが手直しを行い、非常に適切な内容となっている。新版では、王子は「勇敢なライオン」になりたいと欲し、ドリトル先生が髪をボサボサにするヘアトニックを与える。しかし、このボサボサ効果が一時的であるがゆえに、王子には手鏡を使わせない。「勇敢になり、注目浴びるためには、何もライオンを真似る必要はないのだ」ということをわかってくれたらな〜、とドリトル先生はペットたちに話す。
このようにアメリカでは原文を修正し、発禁処分は1997年から解かれたようだ。日本での騒動は、『ちびくろサンボ』の絶版(しかし、2005年6月に復刻)に気をよくしたグループが、「人権」先進国アメリカに倣えとばかり、次の矛先を『ドリトル先生』に向けてきたということなのだろう。
で、私がこの『ドリトル先生』を読むことになったキッカケは、日本に最初の戦略爆撃を行った部隊名がドゥーリットル隊(Doolittle中佐)であることを知って、「アレッ」と思ったからだ。
「ドリトル」(Dolittle)は「ほとんど何もしない=怠惰な」という形容詞なので、ドリトル先生は「ものぐさ先生」を意味する冗談の名前かと思っていた。しかし綴りは「Doolittle」で1文字違うとはいえ、同じ由来と見られるこの苗字の人たちがアメリカにはたくさんいるらしい。
「あなたの先祖がわかります」というAncestry.Comによると、「ものぐさ家」ことドゥーリトル家は、数千人はいるようだ。アメリカにいるということは、移民元のイギリスにも当然いるに違いない。
イギリス近代文学論特講
[英]ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw [1856-1950])
『ピグマリオン』(Pygmalion)
初演:1914年4月11日 His Majesty Theatre (イギリス初演)
[英]アラン・J・ラーナー([歌詞+脚本]Alan Jay Lerner)
とフレデリック・ロウ([作曲]Frederick Loewe)
『マイ・フェア・レディ』(My Fair Lady)
初演:1956年3月15日 Mark Hellinger Theatre (2717回)
映画化:1964年 George Cukor 監督
主要登場人物:
Professor Henry Higgins(Rex Harrison)・・・音声学者
Colonel Hugh Pickering・・・インド駐在の言語学者
Eliza Doolittle (Julie Andrews / Audrey Hepburn)・・・花売り娘
Alfred Doolittle(Stanley Holloway)・・・イライザの父
Freddy・・・イライザに一目惚れする男
Nepommuck・・・ヒギンズのかつての弟子、大佐夫人お抱えの通訳
『ピグマリオン』(Pygmalion)
初演:1914年4月11日 His Majesty Theatre (イギリス初演)
[英]アラン・J・ラーナー([歌詞+脚本]Alan Jay Lerner)
とフレデリック・ロウ([作曲]Frederick Loewe)
『マイ・フェア・レディ』(My Fair Lady)
初演:1956年3月15日 Mark Hellinger Theatre (2717回)
映画化:1964年 George Cukor 監督
主要登場人物:
Professor Henry Higgins(Rex Harrison)・・・音声学者
Colonel Hugh Pickering・・・インド駐在の言語学者
Eliza Doolittle (Julie Andrews / Audrey Hepburn)・・・花売り娘
Alfred Doolittle(Stanley Holloway)・・・イライザの父
Freddy・・・イライザに一目惚れする男
Nepommuck・・・ヒギンズのかつての弟子、大佐夫人お抱えの通訳
オードリー・ヘップバーンが扮する『マイ・フェア・レディ』の女主人公も、イライザ・ドゥーリトルだ。原作『ピグマリオン』は1914年の作品なので、『ドリトル先生』の作者ジョン・ロフティング(John Lofting)は、この『ピグマリオン』に触発されて、動物語ペラペラのドリトル先生を思いつき、1920年に『ドリトル先生 アフリカゆき』を完成させたのではなかろうか。
それにしても、「ものぐさ家」の人たちは、戯曲から小説、空爆にいたるまで、派手な演出がお好きなようである。
ドリトル先生は小学4・5年に大半を読みました(最後の2冊くらい未読)。
アメリカでは2冊しか出てないんですか。エディー・マーフィーの「DR.DOLITTLE」(1998)が原作無視(らしい)のはそんなところにあるのですかね。
井伏訳は超訳なので、いまさら言葉狩りで他の訳者に書かせても原作の魅力を伝えるのは不可能でしょう。
井伏訳のすばらしさについては南條竹則先生の「ドリトル先生の英国」に詳しいです。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/416660130X/
読んじゃった大人が読むと間違いなく感動できます(ex.なぜ航海記でクモサル島の住人はドリトル先生に「シンカロット王」と名乗れといったのか)。南條氏はファンタジー作家であり(第5回日本ファンタジー大賞受賞)、英文学者でもあり、美食家でもあり、それらの蘊蓄を全て傾けてくれます。ちなみに大学2年の語学でお世話になりました。もし未読であれば日本に帰国の際に是非挑戦してみてください。
帰国まで待てません! 社怪人日記( http://haluhico.exblog.jp/ )をグーンと下にスクロールすると「ドリトル先生の英国」の表紙写真が載っています。haruhicoさんが字数制限いっぱいで書きまくったときに、これを見つけ、航空便で入手しました。実はツンドクなので、これから読むところです。日本の叡智、社怪人日記・・・・。
>航空便で入手しました。
あらスゴイ。片隅とはいえ書いておくものですね。
エキブロはアフェリエイトがないので、ライフログから行かれても何にもバックがないんです。まぁ、授業に全然出ないで優をもらった恩返しというところ(苦笑)。
あそこに並んでいるのは全て読んだ上で一押しの本(渡部先生については当たり障りのない「知的生活の方法」を挙げてますが)です。入手可能な物に限りますが。
最近軽くするために10記事(以前は25記事)に減らしたのは間違いだったかしら。
「ドリトル先生の英国」はあちこちで推奨しまくっているのですが、なかなか反応がないところを見るとみんなツンドクなのか(笑)。昨日から夏休みですが私も全然ツンドクが解消できません。というか明日・明後日でもっと増えそう。
haruhicoさん推奨の『ドリトル先生の英国』(文春新書)ですが、序文(p10)で「ドゥーリットル爆撃隊」について1行だけ、チラッと触れてますね。映画『パールハーバー』に出てくる指導教官(Alec Baldwin)がパイロットの「ドリトル先生」だったというわけです。http://www.themoviespoiler.com/Spoilers/pearlharbor.html
『ドリトル先生の英国』のp153では映画『マイ・フェア・レディ』についても触れてますが、女主人公イライザの苗字が「ドリトル」があることは残念ながら書いてません。
「ドリトル先生」、「パールハーバー」、「マイ・フェア・レディ」という3つの映画が「Doolittle」でつながっていたとは、面白いですね。
ドゥーリットル中佐というのは、戦前はエア・レースなんかに出ていた、根っからの飛行機バカ一代ですね。 それが戦争になって、空母から爆撃機を飛ばして敵の首都を攻撃・・・だなんて野心的な作戦を上層部に呑ませるとは、いかにもアメリカ人好みのワクワクする冒険物語です。 そりゃ映画にもなる罠。 「パールハーバー」以外にも、「東京上空30秒」(という題名だったっけ?)という古いアメリカ映画を、韓国の下宿先のTVで見た記憶があります。 韓国では、8月15日が近づくと、こうした反日戦勝映画を放映したがるんですよね。(w ドリトル先生も、中学校のときにほとんど読んだなあ。