China’s persistent Japan syndrome (IAN BURUMA - The Financial Times) 2005/4/15
日本政府が、戦争中の悪行のすべてを惜しみなく無条件に謝罪したとしよう。日本のすべての教科書に、南京虐殺や慰安婦問題などの戦時残虐行為が記述されたとしよう。中国・朝鮮・東南アジアにおける日本の戦争犯罪を暴く博物館・記念館を山ほど造ったとしよう。東シナ海の領土問題で、日本が権利を放棄したとしよう。かりにそうしたとして、中国人が日本大使館への投石、日本人留学生へのいやがらせ、国連常任理事国入りへの反対をやめてくれるだろうか? まずムリだろう。中国で感情的かつ暴力的なナショナリズムが沸騰している理由は、これが、中国政府の容認し得る唯一の抗議形態であるからだ。
韓国の例を見るまでもなく、民主主義国家でも同じことが起こりえるのだ。きっかけは偶発的であろうが、いったん起こってしまえば、韓国政府であれ中国政府であれ、その動きを無視することもできず、無理やりに押さえ込むこともできない。北京で日本大使館が破壊されたときの、中国警察の奇妙な受動的な態度もうなずけることなのだ。
中国政府も(そして幾分控えめな)韓国政府も、自らの失点から目をそらすために反日感情を意図的に煽っている。ナショナリズムと資本主義の発展こそが、中国共産党が権力独占を正当化できる唯一の方策となってしまっている。とりわけ資本主義的発展が揺らいでいるときは、ナショナリズムの出番である。トウ小平が日本資本を含む外資に門戸を開いて以来、マルクス主義は色褪せ、日本の過去の悪事を暴く「愛国主義的な記念館」が中国全土に溢れるに至った。
第2次世界大戦中の日本の爪痕は、国民の愛国心を高揚させるには必要十分な悪行だ。しかし中国の為政者は、南京虐殺よりもはるか昔から、外敵をうまく利用しているのだ。1900年の義和団事件(革命分子「義和団」が外国人と西洋かぶれの中国人を攻撃した事件)も、清朝の西太后からバックアップを受けていた。西太后の狙いは、厳しい経済情勢に対する不満の矛先を、外国人排斥運動に振り向けることだった。だが義和団はいかなる権威も嫌っていた。ゆえに日本を含む外国軍隊が義和団の乱を鎮圧すると、西太后はきびすを返し、外国勢力を支持するに至った。
同じパターンが今日も続いている。中国の反乱分子の中に、外国人嫌いと反体制主義が爆発寸前の状態で混在している。中国人の日本人嫌いも、1895年の日清戦争に遡ることができる。当時、日本が列強の仲間入りをする一方で、中国経済は低迷し、沿岸都市は外国の法治下に置かれ、大部分の国土は軍閥が群雄割拠し、のちに日本軍がそれに取ってかわった。
中国で最大級の反乱といえば、1919年5月に起こった五四運動だ。北京大学の学生が(ドイツ敗戦を処理するパリ条約で)山東省権益がドイツから日本に引き渡されたことに抗議するものだった。見かけ上、五四運動は反日運動であった。だが実際は、弱体化する非民主的な中国政府に矛先が向けられていた。この運動の落しどころはたくさんあったが、結局は毛沢東革命への導火線となった。
それゆえ中国の現政権も、反日行動が制御不能な事態に発展する危険性を十二分に承知している。忘れがちなことだが、1989年の(第2次)天安門事件へと発展した80年代の学生運動も、外国人留学生と「日本軍国主義」への反発から始まっている。最近起こっている北京や上海の反日デモと並行して、浙江省では経済難と環境問題を理由に数万人の村民デモが起こっている。また、反日運動は香港にも飛び火しており、今週末は少なくとも10都市でデモが予定されている。中国のウェブサイトには、怒りの罵倒が溢れ返っている。五四運動の5月4日は目前に迫る。
浙江省の村民デモと各地の反日デモが直接リンクしているという証拠はないが、歴史に少しでも素養のある政府高官にとっては、「もしかしたら」という戦慄の思いがよぎって当然である。当局がデモを制止することができない理由には、以上のような背景があってのことだ。おそらく、ほとんど疑う余地がないことだが、今後日本人がどう対応するにしても、歴史は繰り返す、ということだ。
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筆者はニューヨークのバード大学教授。著作には「Inventing Japan」や「Bad Elements」などがある。
韓国の例を見るまでもなく、民主主義国家でも同じことが起こりえるのだ。きっかけは偶発的であろうが、いったん起こってしまえば、韓国政府であれ中国政府であれ、その動きを無視することもできず、無理やりに押さえ込むこともできない。北京で日本大使館が破壊されたときの、中国警察の奇妙な受動的な態度もうなずけることなのだ。
中国政府も(そして幾分控えめな)韓国政府も、自らの失点から目をそらすために反日感情を意図的に煽っている。ナショナリズムと資本主義の発展こそが、中国共産党が権力独占を正当化できる唯一の方策となってしまっている。とりわけ資本主義的発展が揺らいでいるときは、ナショナリズムの出番である。トウ小平が日本資本を含む外資に門戸を開いて以来、マルクス主義は色褪せ、日本の過去の悪事を暴く「愛国主義的な記念館」が中国全土に溢れるに至った。
第2次世界大戦中の日本の爪痕は、国民の愛国心を高揚させるには必要十分な悪行だ。しかし中国の為政者は、南京虐殺よりもはるか昔から、外敵をうまく利用しているのだ。1900年の義和団事件(革命分子「義和団」が外国人と西洋かぶれの中国人を攻撃した事件)も、清朝の西太后からバックアップを受けていた。西太后の狙いは、厳しい経済情勢に対する不満の矛先を、外国人排斥運動に振り向けることだった。だが義和団はいかなる権威も嫌っていた。ゆえに日本を含む外国軍隊が義和団の乱を鎮圧すると、西太后はきびすを返し、外国勢力を支持するに至った。
同じパターンが今日も続いている。中国の反乱分子の中に、外国人嫌いと反体制主義が爆発寸前の状態で混在している。中国人の日本人嫌いも、1895年の日清戦争に遡ることができる。当時、日本が列強の仲間入りをする一方で、中国経済は低迷し、沿岸都市は外国の法治下に置かれ、大部分の国土は軍閥が群雄割拠し、のちに日本軍がそれに取ってかわった。
中国で最大級の反乱といえば、1919年5月に起こった五四運動だ。北京大学の学生が(ドイツ敗戦を処理するパリ条約で)山東省権益がドイツから日本に引き渡されたことに抗議するものだった。見かけ上、五四運動は反日運動であった。だが実際は、弱体化する非民主的な中国政府に矛先が向けられていた。この運動の落しどころはたくさんあったが、結局は毛沢東革命への導火線となった。
それゆえ中国の現政権も、反日行動が制御不能な事態に発展する危険性を十二分に承知している。忘れがちなことだが、1989年の(第2次)天安門事件へと発展した80年代の学生運動も、外国人留学生と「日本軍国主義」への反発から始まっている。最近起こっている北京や上海の反日デモと並行して、浙江省では経済難と環境問題を理由に数万人の村民デモが起こっている。また、反日運動は香港にも飛び火しており、今週末は少なくとも10都市でデモが予定されている。中国のウェブサイトには、怒りの罵倒が溢れ返っている。五四運動の5月4日は目前に迫る。
浙江省の村民デモと各地の反日デモが直接リンクしているという証拠はないが、歴史に少しでも素養のある政府高官にとっては、「もしかしたら」という戦慄の思いがよぎって当然である。当局がデモを制止することができない理由には、以上のような背景があってのことだ。おそらく、ほとんど疑う余地がないことだが、今後日本人がどう対応するにしても、歴史は繰り返す、ということだ。
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筆者はニューヨークのバード大学教授。著作には「Inventing Japan」や「Bad Elements」などがある。
■追加:反日デモ爆発の日程表
■関連記事:
http://japanese.joins.com/html/2005/0415/20050415204821100.html
同じイアン・ブルマからの引用ですが、韓国の新聞(中央日報)がいかに、自分の都合のいいところだけを抜き出して、物事を論じているかわかります。
「日本には、ヨーロッパ文明の啓蒙主義的、ヒューマニズム的伝統を受け継ぐゲーテのような人物も、ナチス暴政を避けて海外に亡命したトーマス・マンのような作家もいない。 経済大国の知的後進性が問題である」
↑他国のこと気にするより自国のこと何とかしたらってな感じですね。
>北京原人さん
ご指摘の部分はイアン・ブルマ「Wage of Guilt」からの引用ではなく、中央日報コラムニストの自分の言葉ですよね。
>「日本には、ヨーロッパ文明の啓蒙主義的、ヒューマニズム的伝統を受け継ぐゲーテのような人物も、ナチス
>暴政を避けて海外に亡命したトーマス・マンのような作家もいない。 経済大国の知的後進性が問題である」
http://japanese.joins.com/html/2005/0415/20050415204821100.html
「金永煕(キム・ヨンヒ)国際問題記者」のコラムですか。朝日「妄言コラム」の加藤周一を2周り頭を悪くしたタイプですか。国際的に「問題」のある記者ですな。
欧州ヒューマニズムを受け継ぐかどうかはわからないが、日本には「武士道」の新渡戸稲造や、「茶の本」の岡倉天心や、「禅と日本文化」の鈴木大拙など、超国際人もたくさんおりますが。韓国の知的先進性を示す作家や言論人って誰なんだろう? まさか、「金永煕(キム・ヨンヒ)国際問題記者」こと、私です、って言いたいのか、この妄言おとこ!
という姓が非常に気になります。「ビルマ」のことでしょう。
そんな苗字のヤツがいるわけねぇだろ、というわけで、誰かの偽名(山本七平氏におけるイザヤベンダサンのようなものか)という気がしてならぬのですが。
トラックバックありがとうございます。
全文を探して訳したりするのは大変だなぁ・・と思っていたので、怠け者の私には非常にありがたい記事です。別記事ですがトラックバックもさせていただきました。
中央日報の記事は酷いですね。私は読んだとき思わず失笑してしまいました。
と、思いながらいつも拝見させていただいております。
大学でヒロさんは何のご専門だったのですか?
ふと思ったのですが、
歴史・社会科の教授といわれる方々は外国語がどれくらいできれば
教授となれるのでしょうか。
どうしてこの疑問が生じたかというと、
次から次へと湧き出てくる疑問に、ヒロさんのように取り組んでいたら
「偏向できない」と思ったからです。
あ、でも偏向の度合いにあわせて外国語を読んでいけばそうなるのかな?
それではまた。
>DL3036さん
ブルマはアメリカの大学で教えるオランダ人。確かに変わった名前ですね。ビルマ利権にからむファミリーなのかな?
>dochitebouya_usa
ヒロさんは毎日10時間、インターネット大学に通っています。日本では大学に在籍してましたが、試験で単位を取っただけで、出席率は5%ぐらいで卒業しました。専攻は秘密、というか、言っても「何じゃ、そりゃ!」でぶっ飛ぶだけです。1年後に「ヒロさん日記」が続いていたら、暴露しましょう。
あー、私も「教授」になりたい。でも、こんな大学の教授にはなりたくない。↓
http://web.archive.org/web/20040407160115/http://www.bekkoame.ne.jp/~ymasaki/kanso.htm
R.F.ジョンストン『紫禁城の黄昏』そのままの光景になってきましたね。
読んでいて、新聞記事が後追いしている感じで、不思議な気分です。
これから、世界中の華人が連携を計るでしょうから、ますます収拾がつかなくなりますね。
イギリスには、行者ニンニクってありますか?
変なこと聞いて済むませぬ。
コゴミ(クサソテツ)も出てきましたよ。
>1年後に「ヒロさん日記」が続いていたら、暴露しましょう。
楽しみにしております。
教えてくださったリンク先の学校・学部は
「筑紫女学園短大英文学科?」という感じです。
それと、歴史問題とは別にして、
このご時世に「女子学生のフルネームと顔写真をインターネットで公開する」
というのはどのような教授なのでしょうね。
確かにこのような教授は今ひとつ社会人として
自覚に欠けているように思われます。
ドチテはよい学生ではありませでしたけれど高校入学までに公立中学で、
「ローマ帝国の奴隷制度」「仏蘭西恐怖政治」や
「中国人の敵の扱いかた(民族差別・辮髪とか)」を
「日本の中国侵略」「南京虐殺」「プロパガンダ挿絵」と共に習い、
「どこの国も人間は残酷だ」。と思ったりしたものです。
が、このリンク先ページのお嬢さんの学校は世界史の授業があったのでしょうか?
そんなことを考えてしまいました。
どうも失礼しました。
>「日本には、ヨーロッパ文明の啓蒙主義的、ヒューマニズム的伝統を受け継ぐゲーテのような人物も、ナチス暴政を避けて海外に亡命したトーマス・マンのような作家もいない。 経済大国の知的後進性が問題である」
↑他国のこと気にするより自国のこと何とかしたらってな感じですね。
ルーズベルトが亡くなった時、ヒットラーが「ざまあみろ」に近いコメントを出しました。それに対し日本の首相鈴木貫太郎が深い哀悼の意を表したことは、世界中に感銘を与え、スイスに亡命中のトーマス・マンが「私はドイツ人であることがいやになった」と語ったそうです。
トラックバックありがとうございました。
オランダと英国のハーフで、どうやら日本でも暮らしていたようですね
http://members.fortunecity.com/dikigoros/ianburuma.htm
イアン・ブルマの本文、私も読みました。
しかし引用中で、五四運動に関して、「北京大学の学生が(ドイツ敗戦を処理するパリ条約で)山東省権益がドイツから日本に引き渡されたことに抗議するものだった」と書かれておりますが、そこでは日本政府による21ヵ条要求については触れられていませんよな…? 単に彼の意見をそのまま鵜呑みにするだけでは、より真実に近付くことはできないと思います。
これを日訳することで、日本人が真の中国像を見落としてしまう危険性もあると思います。
否定から入っては、解決の糸口はつかめないと感じます。ヒロさん、せっかく様々なことについて深く学ばれているのです。こんなにもきちんとご自身の意見を表現できるのです。だから、ぜひともそれを、生産的な方向へ進めていっていただきたいと強く願います。
あきれた!
イアン・ブルマという人物は歴史に無知なあまり、日本の戦争犯罪とナチスのホロコーストを同列視して、「戦争の記憶」という愚劣なトンデモ本を書いた者ですよ。
祖国オランダの行った過去の罪には何も触れないダブルスタンダードの人物です。
西洋人一般がそうですが。