2013年06月26日

アントニオ・ヴィヴァルディの出会いから30年

ピアノソロ用にヴィヴァルディで何かいい曲がないものか、とあれこれ探していたが、なかなか見つからない。

アントニオ・ヴィヴァルディとの出会いは大学3年目の秋と記憶している。中南米のスペイン語の歌が聴きたくて、東京の下宿先でステレオのレコードプレイヤを思い切って購入した時期だった。レコード屋さんであれこれと物色しているときに、なぜかヴィヴァルディの弦楽曲のLPも衝動的に買ってしまった。自ら進んでクラシックのレコードを聞くのは、中学生のときに「くるみ割り人形」を聴いて以来のことだ。

当時、スペイン語と英語の勉強に没頭していたが、(今思えば)相当に偏った食事をし、運動はいっさいせず、睡眠の昼夜が逆転してばかりいた私は、頭の中にただただコトバばかりがめぐって、情緒も不安定なときだった。そんなときに聴いたヴィヴァルディは「天啓」というにふさわしいものだった。夜遅くにこのレコードをかけると、頭にかぶさっていた雲がサッーと払われて、ほんとうに天に昇るような気分になった。

音楽でこんな経験をしたことは、いままで一度もなかった。いったい何だろう、と考えた。それまでの人生で聴いてきた曲は、歌謡曲が圧倒的に多い(岩崎宏美とか、郷ひろみとか、そんなやつ)。クラシックでもシューベルトの歌が好き。中南米フォルクローレに傾倒したため、スペイン語の曲が多い。チャランゴやケーナ、パンフルートの器楽曲も好きだったが、どれも人の声のような響きがある。

一方、目の前に拓けた新しい世界は、人の声が聞こえない世界。幾何学模様のような整然とした構成。バイオリンの高い周波数の音色。

これをきっかけに、音楽療法について少し調べ始めた。しばらくすると、ヴィヴァルディのマンドリン曲が使われている「スーパーラーニング」という語学教材にも出会った。バロック音楽は精神安定とリラックスにはとてもよいらしい。さらに、学園祭でバロック室内楽のクラブの発表会があり、行ってみると、リコーダーの名人がソプラノでヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲(RV356)イ短調の第一楽章を吹いているではないか!

結局、遅まきながら、このクラブに大学4年目から入部し、リコーダー演奏に励むことになった。部室にあふれていた楽譜には、ヘンデル、テレマン、バッハが多かったので、わたしもセッセとその世界に馴染むことになった...

... という30年以上前のむかし話でございます。

さて、この1カ月、YouTubeでヴィヴァルディを聴きまくってみたが、知らない曲に次から次へと出会う。「ストラヴァガンザ」というバイオリン協奏曲。オーボエ協奏曲。バスーン協奏曲。リコーダー協奏曲。やたらと協奏曲が多いと思いきや、協奏曲を500以上も作曲している。彼はバイオリンの一流の演奏家でもあり、弦楽に相当のこだわりを見せている。一方、鍵盤曲はあまり充実しておらず、チェンバロ協奏曲がわずかにある程度だ。

ヴィヴァルディのピアノ曲を探そうと思っても、なかなか見つからないわけだ。

だが、同時代のバッハがヴィヴァルディの楽譜を入手し、協奏曲集「調和の霊感(L'estro Armonico)」のうち、数曲をチェンバロとオルガン用に編曲している。この中で一番好きなのは、第10番(4本のバイオリン)を4台のチェンバロ用に編曲したBWV1065。この曲の第1楽章をピアノソロ用に編曲した楽譜が見つかったので、レパートリーにすることに決定!

わたしのヨハン(バッハ)とアントニオ(ヴィヴァルディ)に感謝の気持ちをこめて、練習開始です!

■つぶやき
ヴィヴァルディは同じような曲想ばかりで飽きるという人もいるが、山ほど聴いた上で、自分の好みの曲の好みの楽章ばかりを寄せ集めて、ヴィヴァルディのBGMをつくる。喫茶店の音楽はモーツァルトの方がいいという人も多いけれど、私は静かなヴィヴァルディがさりげなく流れていればサイコー。ヴィヴァルディはヘビーメタルロックの元祖だ、とつぶやいている人もいるが、チェロやチェンバロの通奏低音をばしばしと弾く協奏曲では、確かにちょっとしたヘビメタ気分にもなれる。

■私のお薦めのヴィヴァルディ
★リコーダー協奏曲ハ短調 RV441
★調和の霊感9番 RV230→BWV972

★オーボエ協奏曲ニ短調 RV454
★ストラヴァガンザ協奏曲ホ短調 RV279


posted by ヒロさん at 13:07 | Comment(8) | TrackBack(0) | ピアノが好きなの♪
この記事へのコメント
40年近くも前の事ですが、
社会人になって、やっと半人前の生活を始めるようになった頃、
高校時代の先生がイ・ムジチの「四季」をプレゼントしてくれました。
それまでクラシックなどとは縁が無かったのですが、こればかりはレコードが擦り切れるまで、繰り返し聴き入ったものです。
そのLPとプレイヤーは、今、屋根裏部屋の片隅にあるはずです。
Posted by ダダさん at 2013年06月27日 08:31
ダダさんはいまだにLPをお持ちですか!わたしはCDプレイヤを購入した2〜3年後に、レコード&装置を手放したように思います。
イ・ムジチの「四季」は日本クラシック史上で唯一のミリオンセラーですね!やはりヴィヴァルディは偉大なり。そんなヴィヴァルディに、ネット上で何百曲もアクセスできる時代になって、感無量でございます(それにしても、この1カ月よく聴きました)。
Posted by ヒロさん★ブログ主 at 2013年06月27日 11:38
本、雑誌などと一緒に、前の引っ越し時に大方は処分したのですが、
プレイヤー本体と、何枚かのレコードは捨てきれませんでした。

有名な針のメーカーも無くなりましたね。隔日の感があります。
Posted by ダダさん at 2013年06月27日 19:25
>チェロやチェンバロの通奏低音をばしばしと弾く協奏曲では、確かにちょっとしたヘビメタ気分にもなれる
なんかわかります!今の学生(私もですが)には、本物に良いって思える音楽を聴いてほしいです。
Posted by Othello at 2013年07月14日 05:56
>今の学生(私もですが)には、本物に良いって思える音楽を聴いてほしいです。
イギリス・ニューカッスルの貴公子Othelloさん、ヘビメタ・ヴィヴァルディの世界にようこそ! 言語や音声の研究ばかりしている方は、ときにコトバのない音楽の世界に浸るとよろしいかもです。また、Police/Dire StraitsとVivaldi/Bachを交互に聴くのもおもしろい。前者は「警察/窮地」で、後者は「生命/小川」の意味ですから、よきバランスが取れるかも(爆)。
Posted by ヒロさん★ブログ主 at 2013年07月14日 09:52
>前者は「警察/窮地」で、後者は「生命/小川」の意味ですから、よきバランスが取れるかも
やっぱヒロさんお上手ですね!聴きます!最近、ちょうど良さげなインディペンデントのレコード屋さんを見つけたので、クラシックのCDがないか聴いてみますね。日本だったらレコードも聴けたのに...。

そういえば私がヴィヴァルディに出会ったのは、中学生の時にあるメタルギタリストの演奏を聴いたのがきっかけでした(確か先輩が貸してくれました)。今では、ほとんど臭いメタルなどを聴かなくなってしまいましたが、当時はヨーロッパ的な雰囲気とメタルの臭さが大好きでした(笑)。https://www.youtube.com/watch?v=nmDTO3XUGZ4
Posted by Othello at 2013年07月15日 05:26
イ・ムジチの「四季」が40年前のヒット曲だったというのを初めて知りました。わはは。
わたしは以下の動画をみていて
http://www.youtube.com/watch?v=_jIb3VjA4jg&feature=fvwp&NR=1
背景に流れるバロック的で優雅な曲が心地よく感動しその曲名を知りたくなってネットを探し回り最初はバッハかと当たりをつけていたのですが実はヴィヴァルディーの四季だったのかと知ったのは同じ曲が使われているドコモのCMからでした。一旦それがヴィヴァルディーの楽曲なんだなと知ってしまうとCMに限らずテレビのBGMでわりかし使われていることが多いなあというのを埋もれていた記憶の中から浮き上がってきました。そして中学生のころ一番気に入っていたクラシックアルバムがやはりヴィヴァルディーの四季だったということも遠い記憶の片隅から当時の光景とともによみがえってきました。
Posted by やまだ at 2013年07月20日 13:35
>中学生のころ一番気に入っていたクラシックアルバムがやはりヴィヴァルディーの四季(やまださん)
日本クラシック市場、最初で最後のミリオンセラーですから、すごいですねー。喫茶店のルノワールでも、ヴィバルディがかなり流れていた記憶があります。兵庫県西宮に「ヴィヴァルディ」という喫茶店があるのでいつか行ってみたいです。この喫茶店のBGMは果たしてヴィヴァルディ専科なのかどうか、興味津々。
Posted by ヒロさん★ブログ主 at 2013年07月21日 19:57
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